第2話 上限制度
ルドルフ公国の人口はおよそ3.9万人。正確には3万9千3百28人。議会は一院制で、レオ大公から政府を代表する
5月12日の火曜日に、公国側の政府と話し合いの場を設けた。レオと6人の大臣、そして
『
「制度改定は
「具体的には何人の増加を希望ですか?」
「あと1万増加してもらいたい」
「いっ、1万っ?」
一番大きな声で驚いたのは
「待ってください!本気であと1万人上限人数を増やせと言うんですか!」
上限制度の改定に最も
「今、公国に血液を分けてくれる人の数は都内で6万5千人。全国計算では10万人近くいますが、人には体調というものがありますし、変動する事を考えれば、最低人数は9万人になります」
古舘は公国に献上している血液の詳細を話はじめた。
「1日に一人が
古舘の演説に
「最初に申し上げた9万人は上限制度4万人に対して、公国の移動の際、確保した人数になります。5万人となれば、最低でも、11万人!新たに2万人近くを提供者にせよと仰られるのですか!」
「公国庁や日本国の皆様に多大な負担をかけているのは、
「だから、増加しろと?現実的じゃない!」
「日本の人口は1億人いるというのに?」
レオの発言に古舘は頭に血が上り、机を叩き怒鳴り付ける。
「あなたは人の数を食糧の数とお考えか!」
公国庁側の誰もが肝を冷やし、
「あなた方は、『最短サイクル』というのをご存じですか?」
その言葉に駒村以外は全員首をかしげた。レオも眉をひそめているが、
「簡単に言ってしまえば、人生のサイクルを最短で行うということです。我が公国では成人は15歳、結婚・出産は20代から30代前半。そして、寿命は50代後半から60代になっています」
ルドルフ公国では、60代以上は特殊な役職以外の者はほとんど存命していないのだ。
「日本に来る前は公国の人口は4万人弱いましたが、日本の提示数が4万人だったため、2千人を『ミルフェムの
『ミルフェムの
その
「子供が成人したら家業を継がせ、それが安定したら人口の削減に
全員の表情は暗かった。公国がどれ程身を
「それでも、間に合っていないのが現状なんです。先程、古舘殿が『人の数を食糧の数と考えているのか』と仰っていましたね。では、上限制度の『4万』という数の中には、人生の数も入っているのですか?」
思い沈黙がしばらく流れた。
涛川も駒村も言い返すことが出来ずにいたが、古舘ははっきりと事実を伝える。
「公国の
「我々にこれ以上どうしろと言うのだっ!このままでは数が
「それは、
その言葉に、国務大臣は理性を失った。
「ふざけるな!」
大臣は机を叩いて怒りをぶつけた。
それだけなら、
人間側もそうだが、吸血鬼側も彼の行動に血の気が引いた。本人も青ざめた顔をしており、固まってしまう。
「今日はもう引き上げることにする。また、改めて話し合いの場を設けたいと思う」
レオが切り上げたことで、会議は強制的に終了した。
駒村は一番最後に部屋を出て戸締まりをする。鍵を持って東館へ向かおうとすると、廊下の奥にレオの姿を見付ける。先程の会議で怒りをぶつけてきた大臣が、レオの前に
「申し訳ありません、
「いいんだ、謝るな。お前の気持ちはわかってる。娘夫婦のことは私も心を痛めている」
「……はい」
彼の肩を擦りながら
「人間達と交渉するには忍耐が必要だ。これから先、長い戦いになる。だが、私は決して諦めるつもりはない。共に尽力してくれるか?」
彼は深く
公国側は
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