エピローグ だから彼女は「おほほ」と笑った。
――転校した当初は、まさしく友人が代弁してくれた、「なんだお前戻ってきたのかよ」といった雰囲気だった。
まあ転校したはずのクラスメイトが数か月後にまた教室に帰ってくるなんて展開、そうそうあるものでもない。
怪訝に思われたが、家庭の事情ということで戻ってきた件については深く詮索されず――実際〝名字〟も変わっているから、何かしら察してくれたのだろう。
ただ、邪険にされるのはあんまりじゃないかと思わなくもない。
いや、気持ちは分かるのだ。転校生と言えば美少女or美少年が望まれるものである。見知ったやつなんか願い下げだろう。
しかしいくらなんでも、お前それは冷たすぎないかと思わないでもなかったが、数年来の友人だからこその物言いだろう。
おまけに「義理の妹が出来たんだぜ」なんて言ったから、男兄弟に囲まれている可哀想な友人には酷だったのだ。
それに――
今度こそ、本物の美少女が転校してきたときに。
実はその子と俺、責任負ったり負わなかったりする仲なんだぜ、と自慢してやるので、まあ今の扱いは不問とする。今に見てろよ――
「
ここは高校だぞ、と突っ込みたくなるような担任のコメントの後に、一人の少女が教室に現れた。
いかにも薄幸の美少女といった風情を醸し出す彼女は、しばらく病気療養で休学していたなんていうそれらしい紹介をされてから、頭を下げた。
「
目が合うと、彼女の完璧な美少女スマイルに亀裂が入ったような気がした。
そして、小さな、聞こえるかどうかという声で、ぽつりと――
「……ですわ」
笑顔はそのままに、忌々しげにこちらを睨みながら、密かにそう付け足した。
――これが、『三つ目』
「これまで家族に対しても猫かぶってたんならさ――少しくらい、わがままになってもいいと思うんだよ。責任とか難しく考えないで、君はお姫様なんだから」
「……何を、馬鹿なこと言ってるの」
「俺と昨日初めて会った時みたいな完璧お嬢様、演じてたんだろ? なら、これからは……望むように、思うようにしたらいい。それくらい、許してくれるって」
「誰がよ」
「誰かが。少なくとも俺や
「…………」
「素直になれないんなら……今度は猫を被るんじゃなく、もっとお姫様らしくしたらいい。綾野みたいに――」
「――――」
「まあまあまあ。そっちが勝てばいいだけの話なんだから――なんなら、猫かぶり続ける代わりにネコミミつける?」
だから――
「ワカさま、待ってました!」
声をあげると、彼女はうっとりするくらい魅力的な顔で――
……あとで絶対殺す。
視線に殺意をみなぎらせながらも――
「おほほ」
優美に雅に、笑ったのだ。
だから彼女は「おほほ」と笑う。-プランB- 人生 @hitoiki
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