05











 予め決めた方針に従って、行動に移した。指し示していたルートとは反対側に飛び出す。機械達は二人を感知すると、真っ直ぐに向かってきた。ゼロの銃口からエネルギーの塊が撃ち出される。手前側の警備ロボットに直撃し、振動して停止した。その隙に依頼主は駆け抜けていく。

 後ろにいたもう一体が依頼主の動作を感知して、その背へと追い付こうと体を回転させた。剥き出しの背中に向けて、衝撃は起こる。前に傾ぎ、バランスをとろうと他の部位が動くが間に合わず、妙な体勢で倒れた。依頼主の耳には、後ろからの物音は届いただろうが、足を止める事はなく走り抜けている。

 二人の視界からは依頼主の男性は消えたが、警備ロボまでも消えてくれる訳ではない。足止めの役目を終えても、すぐに抜けられる訳でもない。前に出ているゼロはエネルギーを補充しつつ、様子を窺う。二体は入り口の時と同じく、鎮圧用の武器を構えている。周囲にいる侵入者――ゼロへと向け、片方は迫ってきた。それを銃撃によって遠ざける。



「ぜ、ゼロさんオレも……!」



 目の前で起こる出来事に見ているばかりで、何もアクション出来ていなかったアルフォンスは力になろうと銃口を向ける。手前側にいる警備ロボに向けて何発も撃ち出した。

 しかし中心ではなく外側の装甲に当たってしまい、中心点ではないため衝撃は薄くただ跳ね返される。



「右に避けろ!」

「へ? うわっ!」



 呆けたのも束の間。奥にいたロボットが投擲の動作に入っているのが目に飛び込んだ。すぐにゼロの言葉に従って右に体を倒し、転がるように距離をとる。アルフォンスのいた場所の空気がヒリついている。顔を引きつらせて先程まで立っていた場所をアルフォンスは見つめた。

 その間にエネルギーを補充したゼロがアルフォンス側に寄り、手前の警備ロボットの腕部を狙い撃つ。傾ぐと共に使用頻度の高い手が片側外れ垂れ下がった。劣化と衝撃により手首と腕部の接続部が一部壊れたのだろう。



「持ってきた補給品の残量が少ない。時間稼ぎとしては十分だ。退くぞ」

「は、はい……!」



 無理に戦闘を続ける必要はないと判断し、アルフォンスに指示を出せば頷いた。

 ゼロとアルフォンスの二人は出入口へ向かう。失った武器にも手首にも構わず、二体は侵入者を追い掛ける。投擲をしてくる様子はないが、金属の装甲と重量のある部品パーツで殴られるだけで致命傷になりかねない。

 追いつかれないように懸命に足を上げる。鋭く風を切る音が二人の背後から鳴っていたが、二人とも背後を。ゼロの後ろのアルフォンスは、息をも止めているのかと思わせる程唇を固く結んでいる。表情は内の感情に連動して引き攣るように変動していた。


 出入り口と中とを分ける境界線に踏み込む。一足先に外に到達したゼロは、そこで振り返った。後方にいるアルフォンスが銃を両手で握り、手前のロボットに銃を向けている。先頭は四肢が当たる程の距離ではないが、かなり距離は詰められており、足を止めてしまえば一撃を受けかねない。



「ニオ! 撃つ必要は」



 自身の生命を脅かす――余分と言えるアクションにゼロが制止をかけようとした。しかし、足に力を入れ、対象を真っ直ぐ睨めつけている。アルフォンスは迷いなく引き金を引いた。手を失って脆さが出ている側の中心へと当たる。貫通するような威力はないが、衝撃は起こっていた。

 ほんの一瞬、まるで読み込むような停止が起きる。その隙に、続いてアルフォンスの背後からエネルギーがぶつかった。金属で出来た重い体をよろめかせ、二体目を巻き込む。倒すような事はなかったが、二人は直ぐ様その場を脱出した。


 アジトの近くまで走り抜けた二人は、足を止め息を整える。宝物のように握りしめていた銃をアルフォンスはしまった。



「これで依頼はクリアできた……んスよね?」

「依頼主から受け取れば終わりだ」



 リーダーから完了のタイミングの言葉を聞けば、安堵に息を吐く。生命の危機に合わせて出ていた冷や汗を、アルフォンスは腕で拭った。



「でも、しばらくは銃を教えてもらわないとダメっすね。何度神に祈ったか……」

「いや、良くやった」



 放たれたゼロの言葉に、アルフォンスは目を瞬かせる。やがて、嬉しそうに笑った。


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瓦礫に住まう彼ら 雪吹つかさ @tsukasaF

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