04








「はー……何とかクリア出来そうっすね」



 三階は警備ロボがおらず、無事に四階へと辿り着く事が出来た。ドアのない室内へと依頼主の男性は入っていき、二人は入り口を左右で挟む形で待機している。今のところは襲撃の様相はない。

 目的の部屋へ到着した事で、アルフォンスは安堵に胸を撫で下ろしていた。横のゼロは警戒を緩めず、銃のエネルギー補充をしている。アルフォンスはそんなリーダーに視線を投げた。視線を受けても尚、変わらず自身を休める気配はない。



「……そういえば、ゼロさん今日はどこに行っていたんスか?」

「ああ。調査に行っていた」

「調査って、あの例の……別の目的ってやつっすか?」

「そうだ。前回、全員で行った際に気になる情報を耳にしてな。手当たり次第当たっている」



 足を使って、ひたすら調査に繰り出していたと聞きアルフォンスは関心した様子で相槌を打つ。その行動の原動力となっているだろうに対し、好奇心が刺激されて、口を開いた。



「あの……何をしてるんですか? その、具体的には」

「探している物があるが、はっきりとしている訳じゃない」

「え。はっきり分からない物を探しているんですか?」



 そのがむしゃらさには見合わない、姿形が明確ではない探しものにアルフォンスは目を見開いた。ゼロの説明からは漂う雲の中から、一つの雲を探しているかのような曖昧さに感じさせられる。驚愕した面持ちのアルフォンスを後目に、ゼロは大きく息を吐いた。自身の体の中から、余分な力を抜いている。

 しかし、そうしながらもいつでも戦闘に入れるように、片手には依然銃を携えている。それを見て、アルフォンスは姿勢を正したが、すぐに元に戻った。その様相は目に入っているようだったが、ゼロは気にした様子はない。



「ああ。だが、ここ最近は当たりと言えなくもない。成果が出始めている」

「成果……一体何を……というか。どういう物を探しているんですか?」

「……そうだな。ライ曰くトレジャーハント。私から言わせればトゥームレイダーと言ったところだったが……虹を追うような話ではなくなってきている。全員が揃った時にでも明かそう」



 そこで、背後の部屋から大きな音が立ってゼロが銃を構えて中を覗き込んだ事で話を終えた。

 物音の正体は、中にあった物を依頼者が誤って倒しただけのようだった。目的の物の回収を依頼者も終えている。そのため、その場からの離脱に動いた。


 警備ロボに気を付けながら来た道を戻っていく。一階まで下りたが、突入の際にいた二体の警備が中まで入り込んでいた。アルフォンスの顔には青みが差しており、唾を飲み込んで銃を強く握る。ゼロは依頼者に視線を流していた。



「突入時と同じように道を作り、時間を稼ぐ。そちらは駆け抜けていけばいい。数日以内――出来れば明日には報酬を持って来る事だけは忘れるな。それで契約は終了だ」

「ああ、わかった」



 取りはぐれないようにか、多少の圧を与えながら仕事の締め括りに入る。緊張した面持ちで佇む部下の肩を軽く叩いて、ゼロは二人に道を指し示した。二体が通ってくるであろうルートを避けた空間だ。



「ニオは私の後ろにつき、二体ともこちらに注意を引いたら、反対側に距離をとる。合図と共に動く。奴らを引き付けているのを確認してから、抜ければいい。場合によってはそちらを気にかける余裕がない。何かあっても、気にせず脱出を。三、二」



 簡潔に伝える点だけ伝え、カウントダウンが始まった。

 開始の一語と共にハンドサインを出す。一拍の間の後にゼロとアルフォンスは足を踏み出した。


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