『達成率80%』

沖野唯作

問題編

編集者と小説家の会話

小説家

「これが新作の企画書です! 読んでください!」


編集者

「珍しいですね、短編集ですか。どれどれ……タイトルが『達成率80%』、なにやら意味深ですね」


小説家

「へっへっへっ、実はそのタイトルには深い意味がこめられてるんですよ」


編集者

「それは楽しみです。ところで、この短編集は『独立型』ですか? それとも『連鎖式』ですか?」


小説家

「後者ですね。『達成率80%』は全部で五つの話から成ります。一話から四話で一つずつ殺人事件を扱うんですけど、実は四つの事件には隠された繋がりがあって、最終話でそれが明らかになるっていう趣向です」


編集者

「ベタだけど人気のあるパターンですよね。えーと、コンセプトは『トリックにしか興味のない探偵』ですか」


小説家

「一度、ハウダニットに特化した推理小説を書いてみたかったんですよ」


編集者

「思い切りましたね。今時、トリック一本勝負とは珍しい」


小説家

「いくつかアイデアが浮かんだんでね。どばぁーと使っちゃおうと思って」


編集者

「その心意気、嫌いじゃないです。では、企画書を読むので五分ほど時間をください」



五分後



編集者

「読み終わりました。まさか探偵を守るために、ワトソン役が殺人を犯すとは思いませんでした」

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