無糖ガラス

長月瓦礫

無糖ガラス


「今日で高校生活も終わりか……」


これで何年の付き合いになるんだろうな。

まさか、同じ学校に行くとは思わなかったけど。


幼馴染と呼べばいいのか、腐れ縁と呼べばいいのか。

よく分からないけど、いつも自分より少し前を歩いていた。

ずっと大人びてみてるのに、ふとした瞬間に子どもっぽさを見せる。


つかみどころがないのは、今も変わらない。

未だによく分からない部分もある。


だからこそ、認めたくなかったんだ。

そんなことあるわけがないと思っていた。


しかし、後ろ姿を目で追いかけてしまうし、何かと構いたくなってしまう。

気づいたのは、ついこの間のことだ。


十数年間、一緒にいる友達に恋していることに。


それからは、顔もまともに見れなかった。

目は合わせられないし、心臓の音がうるさいし、何かと落ち着かない。


普段と違うのをすぐに見抜いて心配するのは、鈍感なのか優しさなのか。

本当に訳が分からない。


イライラしてもしょうがないのは分かっていても、そう簡単に言えるはずもない。

素直になれない自分に余計腹が立って、八つ当たり。

何を言っても楽しそうに笑って、受け流される毎日だ。


「好きだ!」


後ろ姿に向かって、ガラス瓶にたまった砂糖をぶちまけていた。

尋常じゃないくらい、顔が熱い。


「……何? よく聞こえなかったんだけど。

もう一回、言ってくんないかな?」


後ろを振り返って、からかうように笑う。

砂糖に混ざってるガラスを突き付けられたような気分だ。


拳を固く握りしめる。何を言っても届かない。


多分、これからもきっと。


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無糖ガラス 長月瓦礫 @debrisbottle00

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