膝を抱えてぎゅっと目を瞑る
ふとしゃがんで見たら隙間越しに仮面を被った顔と目が合った。
息を呑む。驚き過ぎて声が出なかった、幸いなことに。
家の中。粘土製の仮面を被った子供達が私を探している。台所側に一人、二階に少なくとも二人――そして四つん這いになって低い所を探している四人目。私はクローゼットに隠れ、隙間から家の中を窺っている。
目が合ったような気がしたが、四人目は私に気付かなかったようだ。
「いないよ」
と、彼は台所側に声を掛けた。
小学校低学年だろうか。まだ第二次性徴も始まっていない本来愛くるしいと言っていいような子供。原色の絵の具を塗りたくった仮面さえ被っていなければ。どこか遠い国の呪術師のような禍々しさが漂っている。
私を探しているのは、かれと似たような子供達だ。皆、仮面を被っている。家の中に四人。多分だけど。そして家の外に沢山。
台所側から声が返ってくる。
「いないね」
「外に逃げたのかな?」
「たっくん達が見張ってるよ」
「じゃあ、隠れてるのかな?」
「二階かも知れない」
「僕達も二階に行く?」
「行こう行こう」
たったったっと軽やかな足音を立ててかれらは居間を去り、階段へ――足音は二階に駆け上がっていく――「いた?」「こっち来ちゃ駄目じゃん、一階探さないと!」「一階にはいないよ」「それでも駄目! 二階は俺達! お前らは一階だろ!」
子供達が罵り合いを始めるが聞こえる。
が、外に見張りが立っているという情報が聞こえたし、五人目もいるかもしれない。迂闊に動けない、まだしばらくここに隠れている他ない。
二階から大声、部屋を荒らされる音、物が落ちる音、なにかが割れて壊れる音、笑い声が聞こえてくる。私にできることは早くいなくなれと祈るくらいだ。膝を抱えてぎゅっと目を瞑る。どうして――
外から悲鳴が聞こえ、しかし唐突に途絶えた。二階で歓声が上がる。
「すごいすごい!」
「僕達も!」
「もう一回一階探そうぜ!」
ドタバタと階段を駆け下りてくる。足音は一つ、二つ――駄目だ、数え切れない。
たったったっと足音が近付いてきて「ここ調べた?」そして今。
ふと今 @kt1208
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