先輩への純な憧れと、十代の心の瑞々しさを、小さなタイムカプセルに詰めたような、美しい小品です。この4000字の小箱を開けたことで、先輩の引退に号泣していた、あのころの自分の純粋さ、繊細さを思い出しました。このお話を書いてくれたことに、思い出させてくれたことに、感謝しています。描写も本当にお上手で、なにより綺麗……踏み切った先で「空が青い。」なんて、体験した人にしか書けない言葉ですよね。陸上の世界さえ垣間見させてくれる、素敵なお話です。
走り幅跳びに青春を捧げる陸上部の先輩と後輩の物語です。まず、冒頭のたった数行の《体の動き》の描写だけで描かれる緊張感、そして跳ぶ瞬間の躍動感に惹きこまれました。ほのぼのした二人の女の子の会話と裏腹に、走り幅跳びに懸ける彼女たちの動きの描写は非常に鋭く、鍛えぬいたスポーツ選手のように無駄がありません。集中して、頭の中から余計な物が消え、後に残ったのは「飛べた」と思える瞬間、そんな情景が伝わってくる作品でした。
陸上の走り幅跳びを題材に、徹底的に先輩と後輩の微笑ましいやりとりが繰り広げられていく。おすすめしよう。かつて部活で汗を流した全ての人のバイブルとして。