第5話「愛なき者リリー」「罠の体現ダズ」
「へぇ、丘を越えたらこんな景色なんだな。最高かよ!」
僕は辺境な町から抜けて、東の丘を登った。ここから丘を降りていくつもりだ。さっきの町は様々な人が居て、暇しなかった。怪我のせいで体も鈍ったので、リハビリがてら低額の賞金首を1人でも狩ってみるか。
そういえば、毒薬のノートはメイド長に渡してしまったが、頭には入っていたし、時間もあったので、ちょこちょこ薬は作っていた。
暇なので僕の居る国の話も少し話してみようか?この国は大陸続きだが、西の果てにはとてつもなく大きな山脈があると聞く。そこを越えると沿岸部ではもちろん交易も盛んで、ここよりももっと人通りが多く賑やかだ。僕が行く先は東なので、故郷へと戻っていく形になるのだが、沿岸部に行って異文化交流を楽しむのも悪くはないなァ。
「きっと、僕が首狩りを辞められたら、あそこで使用人にでもなっていたんだろうね。それはないかw」
一世一代のお別れかのように、ユメたちと離れるのは少し寂しいが、僕は脱走兵の腰抜け賞金首だ。節度を弁えなければいけない。今度はあんなことがないようにしないと。さぁ、町に着いた。酒場に行こう。
さっき、一世一代のお別れじゃないとは言ったけどね?僕はもう会えないと思うよ。だって命を狙われてるんだから、長生きはしないでしょ?
僕は密かな酒場での楽しみがある。それは酒だ。向こうの黒ビールは旨かったなァ!今度はどんな酒とメシにありつけるだろうか?それを考えただけでもウキウキしてくる。やっぱ生きてるってイイなぁ。
「ここじゃあ何が名物なんだ?」
「ここだとな。あー...なんだろ。何がイイんだろ。」
「.....なんだよ!じゃあ、店主のおまかせで。」
「はいよー。」
なんだこの店主wズッコケそうになるくらい無気力だな!じゃあ料理を待っている間、賞金首どもの貼り紙でも見てるか。ついでに客の情報も聞いとかないとな。お?僕の貼り紙を見てるヤツが居るぞ。アイツは.....同じ首狩りのダチじゃないか!声をかけねば。
「僕の貼り紙を見て、どうかしたか?」
「んぃや、コイツも元気してるかなーと思ってな....って、元気してるじゃん!」
「よぉ、テメェも相変わらずだな!w」
腕を組んでアツい挨拶だ。コイツに関して言えば、僕とは違って純粋な首狩りだ。首に賞金はない。
ダズとの出会いも、少し昔の話だ。コイツはかなりへっぽこで、僕を殺そうとして何度も失敗した。そうやって逃げて、からかっているうちに気が合って友達になった。最初は警戒していたが、あまりにこっちの危機感がないのでついからかっちゃったんだ。しかし、飢え死にせずに生きているとは。あんな首狩りの腕でも、案外食っていけるもんなんだな。
「お前、首狩りの腕はからっきしだっただろ。なんで生きてるんだ?」
「ひでぇな!あのトラップに引っかからねぇのはお前だけだよ!」
知ってたか?首狩りのやり方にも色々タイプがあって、それぞれに魅力があって面白いんだ。人殺しを面白く言うのはあんまり良くないんだけどね!
まず、情報を貰ったら、そこへ直接赴き、追跡し、発見次第襲うようなタイプ。これは僕のような感じと思ってもらったら結構かも?難点なのはリスキーさなんだ。自分の命までも危険に晒すからね。でも1番愚直で、分かりやすくて、だが厄介だ。多くの同業者は僕と同じ方法を取ってるよ!ちなみにこの形式の事を、執拗に敵を追いかける様子から、
次に、罠を仕掛けて、賞金首がそこへハマるよう立ち回って、トドメを刺すタイプ。ハニートラップを使うメイド長さんや、今僕と腕組みしてるダズもそれに当てはまる。自分にほとんどリスクがないけど、頭を使うし、強襲するよりも収入が安定しないんだ。知恵を使って対象を狩る人間らしいトコロがあるから、
3番目に、戦士のように多勢で襲うタイプもある。これはパーティを組んだりする方法だね。収入は安定するけど、仲間内で賞金を分割するから少ないんだよね.....しかも、裏切りとか発生する可能性もあるから、僕はオススメ出来ないかな....ホントはこの人達のことを、そんなやり方しか出来ない
最後に、これは聞いた情報でしかなくて、実際に目にした訳じゃないんだけど。オイタしすぎなヤツを暗殺する会社があるらしいよ...要は世直し正義の味方かな?僕は狙ってくれないのを祈るしかないよ...ガクガクブルブル。
「んで、お前さんこそ弓矢嫌いは相変わらず直ってないのか?」
「うるせー!トラウマを掘り出してくるなよ!」
「はっははははは!」
そうだ、実は僕は弓矢が大嫌いだ。ダズにはそのことを話した数少ない友達だ。こんなトコロで会うなんて、世界もまだまだ狭いもんだなぁ。ところで、僕が弓矢を嫌いな理由は主に3つある。
1つ、狙っている時間、イライラすること。
2つ、使っていると動かない分体が弱くなること。
3つ、軍隊入ってた時に戦争で矢に当たり、やむなく戦線離脱したこと。
以上!僕は上から弓矢を使えって言われたから軍隊を抜けたんだ!嘘だけど!でも、これらの理由だけじゃ、こんなに弓矢を毛嫌いする理由にはならない。だけど、なんかとりあえず嫌いなんだ。きっと弓矢に親でも殺されたんだろうね。ハハハ。笑えねー。
「.....いやァ、懐かしいな。今日はこんな昼っぱらから祝い酒だ!今までの旅で起きたこと、共有しようぜ。」
「いいね。僕もやろう!」
その後は2人の宴会だった。いろんな旨いメシも食ったし、様々な酒も飲んだ。興味深い話も色々聞けたんだぜ?例えば、大きな巣穴に居る伝説級に大きなオオカミ。脚の長さだけで僕たちの身長を優に越すものを見たらしい。さすがに嘘くさいが、一度でいいから見てみたいとも思った。僕も色々話したんだ。領主の娘を2回助けたこと、水を弾くすごい外套の話もした。
「そういや、お前の懸賞金額はすごい伸び方をしているな。どうしてまたそんなことになってるんだ?」
その事について、僕は思い当たる節を全て話したが、ダズは少し赤かった顔を青くさせた。一体なんなんだ?僕は何かやらかしたのか?彼は耳打ちで話してきた。
「お前、スゲェヤツに命を狙われてるかもしれねぇ。軍での決定事項を、捻じ曲げる程度には権力を持ったヤツによォ。」
「なんだそりゃ。心当たりが全くないぞ?喧嘩を売られるようなことはなんもしてないハズなんだけどなァ......まぁ、売られたら勝てるヤツなら買うわ。」
「さすが獣だなァ。俺じゃ考えられない思考回路してるぜ。」
それは、僕がアタマん中が危険なヤツだと言いたいのかな?どっちゃにしろ、生き方や流儀を変えるつもりなんてさらさらないよ。この話を続けようかどうか悩んでいると、ダズからまた話があった。
「喧嘩上等なのは素晴らしいが、相手がそうもいかせねぇと思うぞ。姑息な手を使うって意味だ。例えば、贈収賄、だとか?」
「へェ。もしそんなヤツが存在していたら、なかなかイラつかせてくれるじゃないか。ソイツは調子に乗った子供役でもやってる劇作家なのか?」
思えば、「全面鋼鉄のハダ」を狩った時も、少し不自然さを覚えた。ヤツは見た目からして愚直に進んで目的を達成させるタイプの人間なのに、隠れて、痕跡を誤魔化して、不意打ちなんてしてきやがった。誰かの入れ知恵としか思えんな。てことは、僕の命を狙ってるヤツは意外と近くに存在するのか?いや、そうだとしても辻褄が合わねぇ。なら、なんで僕が行動不能の療養期間中に自らの手で殺さなかった?そんなに自身の手を汚したくない?うーん、ワカンネェ。ワカンネェことにしとこう。
「うーん、現時点では何も分からないが、アタマの片隅に置いておいて損は無いぞ?狩人の俺から言わせてみれば、既に罠は張られてる可能性は高い。」
なるほど、しかし上手く出来てるサイクルだなぁ。画面の前の君もそう思うよね?あ、そういうメタい発言はあんまナシ?はーい、すみませんねー。何が上手く出来てるサイクルかっていうと、僕の命を狙ってるヤツらは賞金首を買っている。いや、飼っているって言った方が正しいかな?それで、野生に放たれた賞金首は僕の命を狙う。それを切り伏せると、その事は世に広まり、僕の首の賞金は高くなる。賞金が高くなれば、また僕の命を狙う......ってな感じで、僕はどんどん崖っぷちに追い詰められてくわけ。こりゃあ賞金首は長生きできない訳だわなww
ただ、長いスパンで見ると、このサイクルには穴がある。国のお金ってどっから出てると思う?そうそう、国民から税として徴収してるよね!じゃあ、この税の一部の許容量を、僕1人の懸賞金で越えてゆけば、そのサイクルの中心には僕は居なくなると思わない?じゃあ、それを実行するしかないでしょ!
今の季節は、桜が咲く春だ。次の春までに税徴収金額の約2割以上の金額を僕の首にかければ、僕の勝ち。どうして次の春までがタイムリミットなのか、分かる人は居るかな?.......1人で何やってるんだろ。やめとこ。なんでかっていうと、冬は経済が滞るのよ!君たちの世界では、農業をやってる人っていうのは少ないんだよね?でも、こっちはそういう人はとても多いから、作物が取れない冬になると、売る物が少なくなって自然とそういう風になっちゃうんだよ。お尋ね者の賞金っていうのは忘れられることはあっても無くなることはないから、僕がその金額を越えれば、僕自身手を汚すことなく国の経済(政府国家予算)を破綻することが出来る...!っていう寸法なのサ。え?なんで再来年やそれ以降の冬がリミットじゃないのかって?単純だよ。僕の命がこの世にある保証がないからさ!
「ありゃ、悪い事企んでる顔してるね、お前。」
「いやなに、面白いこと思いついたもんでさぁ...」
「へぇ、ぜひ俺に教えてくれよ。」
さっき僕が上文で説明したこと全てを耳打ちで話した。僕もなかなか面白いことを考えるようになったもんだなぁw
「それ....国をぶっ壊すつもりなのかよ!?す、すげぇな。俺は結構頭いいつもりで居たけど、お前はまた頭がキレるヤツだな。そうか、だから
「ふふん、そうだろう?もっと褒めてくれよ。」
ビーストをやってる人間というのは、基本的に運動能力が高いだけでは食っていけない。瀬戸際での勝負強さ、ひらめき力。どんな状況でもキレる頭が必要なのだ。ハンターのように知識を詰め込む頭ではなく、知識を活用する頭が必要なんだよ。あくまで持論だぞ?極端なヤツはずっと筋トレやってたりするからな!
「いや、それは本当にスゲェよ。ただ、国をぶっ壊したら俺たちは今までのような首狩りどころじゃなくなるよな。そこら辺考えてるかは分からないけど、」
まぁ、僕の命が冬まであったら....の話なんだから、そんなに気難しく考える必要はないよ。どうせ明日もあるか分からない人生なんて、褒められたもんじゃないだろうし。
そうだ、どうせ再開したのならもっと交流出来るといいね。狩りに誘ってみよう。
「じゃあ、今日はそろそろお開きにしようか。僕は明日狩りに行こうと思うけど、君もどう?明日だけは一緒にパーティー組まない?」
「おぉ、いいぜ。取り分は山分けだろ?しかし、俺とお前で形式が違うのに組んじまって大丈夫か?」
「罠仕掛けてから攻撃すれば大丈夫じゃないか?」
「それじゃあ大丈夫か。じゃあ明日の朝な!いやー今日は食べた食べた!」
僕に手を振り、先に会計をチップ込みで半分済ますダズ。僕は一服して、余韻を楽しんだ。食事後の余韻を楽しむのは、人生において非常に大切なもんだ。話を聞くかぎり、こっから東の海の果ての島国では、食後に植物を煎じたもんを通して飲むらしいな。そうやって人類は生きる喜び、幸福を見つけてきた。これは冗談なんかじゃない。僕は田舎者で、この大陸から出たことはないが、そうやって旅の意味を作るのも悪くないなァ....画面の前の君たちもそう思うよね?
そういえば、君たちは僕の所持金は知ってるかな?ざっと数えて30万だよ。
「あは、久しぶりにドキドキしちゃいましたぁ...あの情報だけで、私たちの存在の有無に行き着くあのハンターの思考回路は、危ないですねぇ。」
俺の隣に座ってる女のような男はそうやって呟く。コイツは自分のことをリリーと呼んでほしいそうだが、それは愛称だろう?完全に恋人じゃねぇかそんなもん。お断りだ。
結局俺たち2人はリムランの行く町へつけていった。あれ、そういや、俺ら異動できなかったけど、これ、脱走扱いにならないよな?
「おい、この異動、脱走扱いにはならないよな?俺は本意じゃねぇぞ。」
「.......あは♡」
あは♡じゃねぇよ!なんとか言えよ!テメーと2人で脱走なんざお断りなんだよ!あぁ、オイオイ、俺も晴れて賞金首なのかよ....?まだ戻れば間に合うか?イヤ、それはそれで脱走兵扱いになる。コイツは俺の人生まで握ってやがる。
あぁ、リムラン。お前がこんなに近いのに、こんなに離れて見えることなんて初めてだぞ。
「アノ子は危険なので殺しておきましょうか。」
「は?お前、バカだな。」
普通に考えて、俺たち2人がアイツの命を狙ってることが、アイツの頭の中の可能性に入っちまってるんだ。それを告げ口した人が殺されたとあっちゃあ、俺たちがその可能性をやましいことだと認めてるようになっちまうんだよ。アイツは今ボケっとしてるように見えて頭ン中はフル回転してる。そういうヤツなんだよ。
「あれぇ、准尉、私に助言ですか?ありがとうございまーす。うふ♡いよいよ夫婦みたいですね。共に歩んで苦難を乗り越えて行きましょうー♡」
「あー......やっちまったな。アイツはホントに魅力的なヤツなんだ....」
お前、男だろ。妻のポジンションでいいのかよ....まぁ、お断りなのだがな。
だが、コイツは俺の助言とは裏腹に、殺害を実行に移そうとしたんだ。ただヤツの苦痛に歪んだ顔が見たい。それだけの理由でだ。
....剣を振るうのにも、二足歩行で歩くのにも理由がある。だが、生命を紡ぐこと、快楽を求めること、腹を満たすこと、身体を休ませること、愛するということ、これらに理由はない。大元を辿れば1秒でも長い時間を生きたいという心地だ。結局俺が何を言いたいのかというと......まぁ、自分を愛せない人間は人を愛せないということだ。我ながら酷い暴論だなwwこれが理解出来たバカとは友達になれるかもしれねぇな。
「カレの魅力ならとっくに知ってますよ。あの素晴らしいナイフ捌き...あぁ!」
「実際に見てねぇクセに何言ってんだよ。」
「てへっ!」
さっきからおアツい会話しかしてないが、これからやるコトは人殺し。ほら、さっさと行くぞ。ヤることヤっとくんだろ?早く酒場を出ようぜ。
俺は席を立ち上がろうとした瞬間の話だ。
「オイオイ、さっきから会話を聞いてたら、僕のダチをどうするってんだ?」
リムランッ!まさか、あんなに飲んでおいてこの頭の回転の速さかよ...流石だな。でもって、ヤツはリリーの首にナイフを当てがう。脅しか?周囲も銀色に光るそれにザワつく。よし....!よくよく考えてみれば、この状況は使える!俺は必死に心の内の笑いを堪えながらら、声を変えて質問に返事する。
「ああ、そうだぜ。お前の思ってる通りのことをしようとしてたんだ....!俺たちはお前のダチを苦痛の元に殺そうとしてたんだ......!」
「うへ......凄い耳をお持ちですねぇ。私、関心しちゃいましたよ...」
俺は幼い頃、いつだってお前の後ろしか追ってなかった。だが、今回はお前がキッカケを与えてくれたな。俺はここからリリーの束縛から、自身の力で逃れる....!
「うーん、じゃあいくつか質問しよっか!正直にちゃんと答えてね〜。」
この場に似合わない明るい声色で異な発言をするリムラン。俺も呆気に取られちまったが、そんな甘いこと言ってられないな。
「じゃあ1つ、お前たちの間柄はなんですか?」
いきなり俺とリリーの関係性から問うとはな。ちゃんと俺たちのことを観察して、考察している証拠だ。だって、俺たちは言葉にし得ない妙な関係なのだからな。
「.......上司と部下だ。」
「違います!お兄さん、私たちは夫婦だよ!」
おいいいいい!?余計なこと挟むんじゃねぇよ!今は2人の重要な質疑応答だろうが!?あぁぁぁ、ここはリムランの腕と目を信じるしかないのか....結局俺は、コイツ無しじゃ脅威の火の粉もまともに払えねぇのかよ....
「ダウト。口調なんて変える必要はないんだよ、お姉さん?」
はぁ...とりあえず第1波は終わったか......しかしいつ見ても凄い判断力だなァ。俺はコイツのことを甘く見て褒めすぎなのかもしれねぇが、他の人から見ても多少なりともスゲェヤツだとは思うはずだ。保証はできんがな。
「どうして僕じゃなくて、ダズを狙うの?」
「そんなことは知らん。ソイツに聞け。」
「私はこの人を愛してるからです♡脅威は振り払わなければいけません!」
バカみたいな返答に困惑する時間もなく切り捨てるリムラン。生と死に関して敏感だから気をつけろよなァww
「娼婦みたいな声色でふざけたこと言ってるんじゃねぇ。死にたきゃ勝手に自殺でもしてろよ?」
ハァ、第2波の印象は最悪だな。だが、これで俺とリリーの関係性は分かったハズだ。俺は引き連れ回されてるだなんだ。気付いてくれ!
「次だよ。君は、脅されてるの?それならなんで脅されてるのかな?」
「ん......そこまで気づいて.......」
「は?気付いて?」
おい、感嘆の声が漏れちゃったじゃねぇか。今のは鳥肌もんだったぞ。俺たちの、少しの会話内容と、口調と、質疑応答だけでここまでバレちまうんだ。こりゃ国に命を狙われても10年以上生き延びるわけだわなぁ。
「いや......なんだ。脅されてはいない。あくまで対等な契約だ。」
「そうですよ。私たちの間にそんなに真っ黒なことはありませんよ。」
「真っ黒だとか、僕に対する皮肉か?」
いかん、ピリピリしてるな。だがヤツの脳は未だにフルに回転してやがる。感情的にも冷静にもならない微妙な均衡で行き来している。
人間は感情的になると運動能力が上がるが、思考能力が落ちる。冷静になると思考能力が上がるが、逆に運動能力が落ちる。この微妙な間のところは、それぞれの状態の恩恵だけを貰える。この境地は凄く疲れるのだが、パフォーマンスは最高だ。
「うーん、分からん。男の方は嘘ついてるし、女の方は嘘ついてないし.....」
おいwそれって、リリーは俺との間柄に何も隔たりなどがないと思っていたのか?本当かよ。なんで?なんで?
「とりあえず、この女は殺しておくねー。お姉さん、残念だけど、また来世でね!」
......よし!思えば、これは勝ちに近い賭けだったんだ!
俺が勝ちを確信した瞬間。リムランはナイフをしまった。マジかよ。だが首の拘束は解いてない。
「やっぱやーめた。君、口が笑ってる。なんか癪だなー。その代わりと言っちゃなんだけど.......」
なんだ?急にヤツの椅子を自分の方に向けたぞ。顔を手のひらで挟んでなにかしていやがるな。
「次、ダチの命を狙ったら、お姉さんの命、本当に地の果てまで追いやるから。そんなに僕に殺されたいのなら、両手両足だけちぎって、生かしてあげる。注意してね♡クソアマが。」
「.........」
リリーは黙るしかないようだな。俺だってあれ程圧力のある威圧は見たのは久しぶりだ。
確か、あの威圧を使ったのは俺の記憶じゃヤツのお父さんが喰い殺されたのが最後だったかな?俺たちは動物を狩りに出かけてたんだが、連れてくれたアイツのお父さんが、オオカミに喰い殺された。頭を1発ガブっとな。その時はまだ幼かった俺はションベン垂らすしか出来なかったが、アイツは黙ってオオカミを見続けてた。まるで、この場に居続けようもんならお前の体をバラバラに引きちぎってやる。みたいな?それでオオカミは逃げたんだ。その時リムランは口元だけ笑って泣いてたな。相当ショッキングだったんだろうなァ。
「店主、迷惑かけてごめんね。でも、物騒なお話し聞いちゃって看過出来なかったんだ。」
やっぱり、本能的な部分で、俺とコイツでは生物としての格が違うと思うのだが。画面の前の君たちはそういう風に感じたりしたか?
Bloom 古弥 典洋 @xxOhkaxx
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Bloomの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます