第28話 網

サバイバルの基本はウォーター・シェルター・ファイヤー・フードの順番に優先して確保すべきです。この事は皆さんもベアグリルスからミッチリと教えられていると思います。最終回になって何を基本的なことを言い出すのかと思うかもしれませんが、まずは水なのです。本作では水の確保についてはあまり厳しい感じで描きませんでした。雨が降れば雨水を貯めておけば良いからです。移動していれば川も見つかるでしょう。次に安全な場所ですがゾンビスーツを着て屋内にいれば他の人間からも見つかりづらいため安全です(ベアグリルスはアザラシスーツ)。火もマッチやライターがあれば街路樹の落ち葉や枝のたき火で充分なのです。最後に残るのは食糧です。この段階になると保存食を探して少しづつ食べていくことになります。


ラストは希望が持てるように、ということで女スーツァーを登場させました。この女子は本作を続けるためのいくつかのアイディアの中で生まれたキャラクターです。あえてその背景や名前などはここでは伏せますが、なかなかエグいエピソードを持っています。結果的には女スーツァーを出して正解だったと今は思います。もし主人公がひとりで終わると彼の内心の長文独白で終わるしかないのです。その内容はこれから俺はどこへ行くんだろう何をすべきなんだろう一人で生きていて意味があるのだろうかまたもしモヒカンのような集団を見つけたときは今度こそうまく仲良くできるだろうか無理だろうか確率の問題だろうかバリカンであらかじめモヒカンにしておこうか、いやいやそれは違うだろう待ちたまえよ髪型がモヒカンだから仲良くできるわけではないだろうし次はツインテールのアマゾネス集団というケースも充分に考えられる待ちたまえよ確率でいえば二回連続でモヒカンを引き当てるというのは天文学的に少ない偶然といえるのではないか生きたまえよ時間はあるのだからゆっくりと考えたまえよ歩きたまえよ水を飲みたまえよ意味を見つけたまえよ意味が欲しいのなら。


たとえばこんな具合に風の中に消えていく主人公の後ろ姿で終わるというラストが考えられます。しかしそれではダメだと強く思いました。本作では考えさせる終わり方はダメで巻き込まれながらあっけなく、ぶつ切りがベストと考えました。「子種をよこせ」といういささか斬新な逆ナンパからの、「やぶからぼう」エンドが最高なのです。最後の部分ですが下書き段階では「おい、そこの皮男。子種をよこせ。」と言われた主人公が心の中で「なんだ。急に。」とつぶやいて終わりでした。わずかな違いですが「急に。」という部分を「やぶからぼうに。」と変えて最終的に公開しています。まず「なんだ。急に。」というセリフでは主人公の怒りの感情が読みとれてしまいます(この場面での主人公に怒りの感情は無い)。それをもっとマイルドに怒ってない、単に驚いているということで「なんだ。やぶからぼうに。」と変えました。さらにこの「やぶらかぼう」は日常生活ではまず使う事のないワードです。その違和感によって嘘っぽい印象を演出したつもりです。



コメンタリー終わり

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コメンタリーオブ「ゾンビスーツ・よしお」 おてて @hand

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