老人ホームという舞台も、キャラクター設定も面白いバレンタイン物語

特別養護老人ホームを舞台にした、介護士である主人公・高階啓二と、同僚・山岸エミのバレンタイン恋物語。

まずは特別養護老人ホームという舞台が面白い。ここでなければ、主人公に惚れる(?)美波里さんという可愛いお婆ちゃんを出せないし、キャラクターが生きてこない。このお婆ちゃんの、少女っぽい部分もあり、老人の賢さも併せ持つという造形が見事。
その夫でもある弘も、どこか憎めないのが不思議だ。

「恋」か「仕事」か、というドラマは良くあるパターンではあるのだが、そこに「主人公が不運続きである」というアクセントを加えて、違和感なくバランスが取れているように感じた。

エミは可愛いキャラクターであるが、もう少し内面を掘り下げても良かったかもしれない。甲斐甲斐しく働く優しい女の子、という部分に何かを付け加えても良かった。それでも遊園地の最後は可愛かった。

主人公は不運続きであるが、その不器用さが招いているんだろうな、という部分がキャラクターとして立っている。最後の会話なんて、ほんとに不器用というか、喋るのが苦手というか、読んでいて笑ってしまった。

バレンタイン物語として、気持ち良い作品。もっとたくさんのキャラクターが登場する、テレビドラマ的な連作長編になったらさらに面白くなるかも?と想像してしまった。