俺はすべてのバンド映画は傑作だと思っている(ちなみに潜水艦映画も)。
『ドアーズ』『あの頃ペニーレインと』『バンディッツ』『リンダリンダリンダ』『アイデン&ティティ』等々。
メンバーが格好良く、音楽が決まれば、もうそれだけで映画としては「ハズレ」ない。
そして、そこではたいてい恋と青春が描かれ、メンバー間の友情と確執が描かれ、大きすぎる夢と挫折が描かれる。
傑作になるべき要素が、すべて詰まっていると言ってもいいだろう。
では、ひるがえってバンド小説はどうなのか?
残念ながらビジュアルもないし、なによりも音楽がない。
音楽が聞こえないのに、バンドを描こうとするなんて無茶もいいところだぜ…
というところで、本作『僕がプロデュースする4人の軽音女子』を紹介したいと思う。
まず主人公である大和の立ち位置がいい。バンドのメンバーではなく、女子高生4人のガールズバンド『ダイヤモンドハーレム』のプロデューサー。
プロデュースする、というとなんだかうさんくさい匂いがしてしまうが、大和はメジャーデビュー寸前まで行ったバンド『クラウディソニック』の元メンバー。
いろんな楽器をこなせる人で、軽音女子4人たちに、それこそいちから演奏を教えることができる。
そして『ゴッドロックカフェ』というバーの若きオーナー(祖父から引き継ぐ話も泣ける!)でもあり、練習場所の提供から、デモ音源の作成、ライブ出演までのスケジュールまでこなせる頼もしい大人なのだ。
しかも作曲能力もあり、業界大手のレコード会社から依頼を受けるところから、大和の物語は始まる。
始まる、といま書いたが、これは重要なポイント。
本作は「一度はメジャーデビューの夢に破れた」主人公が、再び音楽業界に戻っていく話でもあるからだ。
つまり軽音女子4人をプロデュースすることによって、かつて破れてしまった「自分の夢を叶えようとする物語」こそ、本作の正体なのである(と思う)。
この構造に、かつて夢に破れた俺は、もう号泣。
夢破れた大人が再び自分を取り戻す物語でありながら、夢を追いかける若者たちを描く青春物語。
これが傑作にならないわけがないだろ!
夢なんか追いかけるな? 叶うわけがない?
正しい大人は、いつも若者にそう言うのだろう。
でも『ゴッドロックカフェ』のおじさん常連たちは、軽音女子たちに優しい。応援している。見守り、ジュースをおごったりもする。
そして落涙なのが、かつて自分が使っていた楽器を、プレゼントするシーン。
それはもちろん、「夢に破れた」おじさんから、「夢を追いかける」若い軽音女子に、夢のバトンを手渡すシーンなのである。
ここで泣かないやつは死ね!
告白するが、俺はまだ最新の更新話数に追いついていない。追いつくまでレビューは書かないつもりだったのだが、ひとりでも多くの人にはやく読んでもらいたいと思い、今回は紹介することにした。
これからの展開がどうなるのかは、わからない。
ライブは成功するのか。
夢のメジャーデビューは叶うのか。
主人公を軽音女子4人で取り合っちゃうの?
ケンカもしちゃったり?
では!
やっと個性的な4人の軽音女子を紹介しよう…というところで文字数がすでに多すぎ。
ごめんね、ボーカル兼リズムギターの古都ちゃん。もちろん本当の主人公は君だよ。
許して、リードギターの美和ちゃん。もっと年相応に、素直に甘えてもいいんだぜ?
謝るよ、ベースの唯ちゃん。君が頑張り屋さんなこと、俺はちゃんと知っているからね。
俺が悪かった、ドラムの希ちゃん。口数が少ない君だけど、俺は本当の気持ちがわかってるから。
あと、ついでにプロデューサーの大和。
俺の可愛い4人を泣かせたら、承知しねえから覚えておけよ。