最終話 未来

「やった!やったよ!大和!合格したよ私!」

「僕も合格だ!頑張った甲斐があったな」

「今度こそ同じ学校に通えるんだね」

「あぁ」


高校3年。

僕は横浜市内の大学を進路として選んだ。

情報処理系の学部や設備が充実した比較的新しい大学。

そして、春姫もまた同じ大学の経営学部を進路として選択した。

僕が将来の夢として語ったソフトウェアハウスの起業に向けて経営面でサポートをしたいからとのことだ。

まぁ元々起業や経営方面には興味があったらしいけど、何だか僕の夢を手助けしたいという春姫の言葉は純粋に嬉しかった。


僕らは今、幼馴染という垣根を越え恋人として付き合っている。

途中仲違いしたこともあったけど、僕らはそれを乗り越え恋人同士となったんだ。


そして春からは更に1歩前に進むつもりだ。

大学に合格することが親からの条件だったけど2人で同棲を始める。

春姫と一緒に大学に通うことも含め今から凄く楽しみだ。


「・・・本当だったら若菜ちゃんや有坂君も一緒だったかもしれないんだよね」

「・・・確かにな。2人は川野辺大学も志望していたから必ずとは言えなかったけど。まさかあの2人がな・・・・」


人も羨むほどのお似合いのカップルだった有坂と山下さんだけど3年になったあたりからすれ違いが増え・・・山下さんが浮気をする形で破局した。


それも浮気相手は僕や有坂の友人でもある太田だ。

詳しい事情は当人たちしかわからないけど・・・・太田の事は僕も有坂も友達だと思っていただけに何だか裏切られた気がした。


ちなみにこの件に関しては、あの温厚な渋沢が太田と山下さんに詰め寄ったって話も春姫から聞いた。

渋沢も僕と同じで悔しかったんだろうな。友達だと思ってたのに裏切られた気がして。

有坂もショックからか学校にもあまり来てないっていうし・・・


でも、僕も春姫も有坂や山下さんには大きな借りがある。

今はそっとしておいた方がいいかもしれないけど、あいつらがもし僕たちを頼ってきたら僕も春姫も手を差し伸べるつもりだ。

2人共僕らにとっては大切な友達だから・・・



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「ご飯できたよ~」

「ありがとう春姫」

「何だか悪いな急にお邪魔しちゃって」


4月になり僕らは大学に通い始めた。

新しい知識が身に着くことは純粋に楽しくて、僕も春姫も充実した毎日を送っていた。


家も大学の近くに借りた。

家賃や生活費は2人でバイトしながら払っている。

大学の学費は親が出してくれたけど同棲は僕らの我儘だからね。


そんな僕らのところに今日は客が来ていた。

有坂だ。

昨日の夜に久しぶりにメールが来て急遽家に遊びに来ることになった。

高校3年の後半からお互い忙しく少し疎遠気味になっていたから、会うのは半年ぶりくらいだろうか。


「色々と心配させちゃったみたいだな」

「・・・まぁそれだけのこともあったしな・・・・もう大丈夫なのか?」

「正直よくわからない。直ぐには忘れられないよ。やっぱり」

「だよな・・・」

「・・・そう暗い顔すんなよ。

 これでも少し前を向こうと思ったから2人に会いに来たんだぜ」

「前を?」

「あぁいつまでも引きこもってもいられないからな。

 ・・・僕もこの近くの専門学校に入学したんだ」

「近くのって最近出来たゲームプログラムのコースがあるあの専門学校か?」

「あぁ僕も大和みたいに素直に・・・自分に正直になろうかと思ってな。僕も大和が言っていたみたいにゲームを作りたいんだ」


素直に・・・か。確かに有坂って、あんまり夢とか語ったことなかったよな。

山下さんの前や部活の後輩たちの前でもゲームやマンガの話もしてなかったし何処か自分を作ってるところはあったのかもしれないな。


「そっか。それじゃお互い頑張ろうな」

「あぁ・・・」

「ん?どうかしたのか?」

「2人はさ・・・この先も僕と友達でいてくれるよな?」

「・・・当たり前だろ!怒るぞ。僕は何があってもお前の友達だ。それとも友達じゃなくなる様なことしたのか?」

「・・・・大和」

「渋沢だってそうだ。あいつも通学で毎日横浜を通ってるんだし、今度みんなで会おうぜ」

「そうだよ。大和や渋沢君だけじゃない。佐和も千歳も栗田君も恩田君も鮎川も小春ちゃんもみんな有坂君が元気になるの待ってたんだからね」

「・・・・ありがとうな大和、栗平」


その後、お互いの学校の事や今後の話など他愛もない雑談を楽しみ有坂は帰っていった。気のせいか少し表情が明るくなったようにも見えた。

ちなみに有坂は隣の駅にアパートを借りてるんだそうだ。

川野辺の町を思い出の沢山詰まった町を出たかったらしい。


「大和・・・やっぱり有坂君寂しそうだったね」

「そうだな・・・」

「・・・ねぇ私達はずっと一緒だよね?」

「あぁ約束しただろ。ずっと一緒だよ」


僕は愛しい春姫をそっと抱きしめ口づけをした。

僕たちもまた未来に向けて進んでいく。

だけど1人じゃない。春姫と一緒にだ。



僕は彼女が好きなんだから。



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ここまでお読みいただきありがとうございました。

この話にて"僕は彼女が嫌いなはずだ"は完結となります。

当初予定してたストーリーは一通り書きました。

文字数も丁度10万文字を少し超えた量となっています。

時間に余裕があればアフターストーリーも少し書くかもしれませんが、書くとしたらラブラブな大学生活かな。

ちなみに大学卒業後の2人は他の作品でも書いたりしているのでよろしければそちらも読んでいただければと(ただの宣伝ですが。。。)

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僕は彼女が嫌いなはずだ ひろきち @hiro_1974

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