どんでん返しが多すぎる!

草薙 健(タケル)

パトラッシュ、僕はもう疲れたよ……。

 2020年3月8日、時刻は正午。

 俺はKAC20205のお題を見たとき、頭を抱えた。


「……どんでん返し……だと……!?」


 ふざけるな。ここに来てなんてお題を出してくれる。


 俺は


 ■


 KAC20201のお題は『4年に1度』。

 最初は『4年に1回』だと勘違いして、全く別の物語を書こうとしていた。しかし、お題を誤解していることに気がつき、パソコンのキーボードを打つ手が止まる。


 別の解釈ができるんじゃね?


 そこまで書いてきた2000字をあっさり破棄。そして生まれたのが、『四年に一度傾く家』である。


『四年に一度傾く家』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894468050


 これは、お題を『四年に一度』と解釈した話だ。まさに発想の転換。どんでん返し。

 我ながら素晴らしいアイディアだ!


 ……と思ったら、同じことをやってる方がいた!


『度し難き斜塔の運命』(作:カワゥソ様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894451267


 さらっと宣伝。


 ■


 アイディアというのはいつ降ってくるか分からない。KAC20201締め切りまで残り40分というタイミングで思いついてしまう。


 そういや、13年と17年で大量発生するセミがいたな。でも、4年ミっていないよな……ピコーン!


『ピコーン探偵は文化祭で無双する』(作:坂井令和(れいな)様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894472438


時雨は小さな狂気を奏でる』(作:坂井令和(れいな)様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889088285

(ピコーンの元ネタ)


 ダジャレオチが爆誕。30分で書き切る。


『四年ゼミ』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894454933


 真面目に話を聞かせておいて、あのラスト。どんでん返し。


 締め切りに間に合ったので公開。後悔はしていない。


 さらにこっちも同じ発想で書いている人がいた!


『ジュウシチネンゼミより愛を込めて』(作:七海けい様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894454879


 ■


 KAC20202のお題は『最高のお祭り』。

 見た瞬間に、『最も高い』の解釈でいけるなと踏んだが、俺が書き始めようとした段階ですでに同じ解釈で数作投稿されているではないか。早い。


『バカと煙は』(作:真野てん様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894494540


『最高のお祭りを知っていますか?』(作:@hiro1969様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894494536


 堂々宣伝。


 こっちも負けてはいられない。鳥○間コンテストをまるぱくr――参考にして、最も高い建造物を作るアイディアで勝負した。


『軌道エレベーターコンテスト』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894493077


 しかも、登場人物の心象の最低、最高まで表現してやったぜ。まさに心情表現のどんでん返しや~。自画自賛。


 ■


 だが、俺の自転車好きがここでくすぶり始める。

 自転車の『最高のお祭り』といったら、あれしかないじゃん。


 ツール・ド・フランス。


 書く。絶対書く。


 だがここはカクヨム。

 ツール・ド・フランスという名前は知っていても、その中身を知っている人はほとんどいないはず。

 ツールには、総合順位トップを示すマイヨ・ジョーヌ黄色いジャージ、25歳以下限定で総合順位トップを示すマイヨ・ブラン白いジャージ(後略)――


 こんなことをいちいち説明していたら、文字数なんていくらあっても足りないぞ! 当然、一番分かりやすいマイヨ・ジョーヌ黄色いジャージに焦点を絞る。

 幸い、実際あった出来事とレース展開を上手く織り交ぜることによって物語はすんなりと完成した。


『とあるサイクリストの革命記念日』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894510648


 総合優勝をチームオーダーで封じられた主人公が、エースの人徳によってあることを達成するというどんでん返し。


 うん、我ながらいい出来だ(自画自賛2回目)。


 ■


 KAC20203のお題は『Uターン』。


 ここで、俺は2つの失敗をやらかす。


 1つ目、お題の解釈に懲りすぎた。


 お題を聞いて、すぐに自転車メーカーの『ターン』を思い出す。これは鳥の名前で、和名は『アジサシ』と言う。


 Uアジサシか。なるほどなるほど。新種の鳥を投入ですね、分かります。


 2つ目、最も苦手な恋愛ものに手を出した。


 いやー、火傷したね。うん。苦手なモノはやっぱ苦手。


『アジサシが君を連れてきてくれた』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894534270


 これはKAC終わったら非公開確定だわ。少なくとも大幅に手を入れないといけない。


 お話自体は、新種のアジサシにある名前をつけることによってどんでん返しがー! ……起こる前で終わってる気がする。あかんやん。


 ■


 恋愛もの失敗は、正直俺を落ち込ませた。

 これはもう一作書くしかない。


 そんなときに、あのネタがぶりっと――おっと失礼、頭に降ってきた。


 Uをう○こと解釈する奴は、流石にいないだろ(笑)

 まさに運営すら予想だにしないどんでん返し。


『ずっとU(う○こ)のターン!』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894549592


 今回のKACで、下記の作品と並んで問題作の自信あり。


『男祭2020』(作:薮坂様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894501132


 おバカとはこういうことを言うんだ(褒め言葉)。


 ■


 そしてやって来た問題のお題、KAC20204の『拡散する種』だ。

 ここで俺は大いに悩む。


 うーん……。困った。


 時間的な都合で出遅れた上、SF的なものはすでにいっぱい作品が上がっている。


(以下、物語の核心的なネタバレがあります。作者としては、『カクヨム・コネクション』を先に読んで欲しいです。


『カクヨム・コネクション』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894596985


 読み終わったら、続きをどうぞ――)

















 ……そうだ、大麻だ。この前、奈良県の高校生が種から大麻を栽培して逮捕されてたはず。


 これは使える。


 麻薬となれば密輸が書きやすい。

 カクヨムの読者に感情移入してもらうためには、カクヨムそのものから切り込むのがベストだろう。

 途中まではカクヨムから生まれるラブロマンス。だが、突然訳も分からず逮捕される。まさにどんでん返し。


 こうして誕生したのが『カクヨム・コネクション』だ。


 ちなみに、タイトル、登場人物の名前(田真)、登場人物の趣味が映画というところに伏線を張ってあったのだが、気付いた人はいただろうか。

 麻薬取引を扱った小説と映画『フレンチ・コネクション』というのがあるため、勘のいい人は読む前から気付いたはずだ。


 なお、どうがんばってもハッピーエンドにできなかったのだが、これを書く前に読んでいたある小説のおかげで、ゴーサインを出す決断をできた。


『(KAC20203)同郷の二人』(作:ホシノユカイ様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894532057


 正直、これもバットエンド。だがメッセージ性が強い。レビューにも書いたが、日本国民全員に読んで欲しい。


 ■


 しかし、満足はできなかった。


 コメディが書きたい!


 種を名前だと解釈して、『種おばあさんが徘徊して拡散する』というのを考えてあったのだが、どうしてもうまく形にできず……。そんなときに読んだのが、この一作。


『遥かなり、我がふるさと』(作:ゆうすけ様)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894538873


 ハードボイルドの世界観が格好いい。うーん、俺もやってみたい。


 だけど、コメディも捨てがたい――ピコーン!(2回目)


 老朽化したロボットを確保する戦闘部隊の話とか、よくね?(笑)


『対SEED大隊所属第7特殊対応班 "Ammo Zero"』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894609832


 前半は超絶格好よく、オチもちゃんとどんでん返しになってて、そこそこの作品に仕上がった。もっとコメディ足したかったけど。


 ■


 そして迎えたKAC20205。


 一旦、『人工知能にデスゲームを強いられた主人公達。誰が死ぬかを主人公が決めないといけないんだけど、選択したのは自殺。1回目のどんでん返し。

 実は、彼らこそが人工知能で、デスゲームをけしかけた方が人間。2回目のどんでん返し』みたいな話を考えた訳ですよ。


 3個目のどんでん返しは、冒頭とラスト。


 最初のセリフはこれ。


 ――『私の名前はナムハNamuhaマイMai。人工知能よ』


 最後の文章はこれ。


 ――私の正体、それはナムハNamuhaマイMaiをひっくり返せば分かる。


 I am a human.私は人間だ。


 うん、アイディアとしては悪くない。


 でもね? 4000字はきつすぎた! 無理ゲー。


 あっさり放棄。どんでん返し。


 そして書いたのが、この自転車コメディである。


『自転車嫌いが多すぎる!』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894644660


 こうしてKAC2020で9作品を書き上げた俺はようやく満足――していなかった。


 ■


「――っていう感じでさ、今までいかにどんでん返しをやって来たかエッセイにするってネタを思いついたんだけど、どうかな?」

「10作品目とかようやるわ……」


(了――KAC2020本当にお疲れ様でした!)

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