be reversed
あゆう
memory5 ~Happy End~
転生した私と彼が出会ってから3ヶ月程がたった。
今は生まれ変わる前に住んでいた村の跡地に、小さな小屋を建てて二人で暮らしている。
近くに街はないけど、私には魔法があるし、彼もまだ小柄だけど、転生特典で剣技と強化魔法が幼い頃から優秀だったみたいで、この辺のモンスターでは相手にもならない。
一週間に一度くらい街まで行って、狩ったモンスターを売り、そのお金で食料を買って帰る生活。贅沢は出来ないけど平和に幸せに過ごしていた。
そんな日の朝。今更な疑問が出てきた。
「ねぇ、そういえばアナタの新しいご両親は?」
「え?あ、うーん。君の噂を聞いて飛び出して来ちゃったからね。でもきっと元気にしてると思うよ?」
「そうなの?挨拶しなくてもいいのかな?」
「それをいうなら僕も君の両親に挨拶しないと。けど、せめてこの体が成人してからかな?まだ十三才だからね。後二年だね」
「やっぱりそうなるのよねぇ。その時は私は二十歳だわ。アナタが成人したらすぐに避妊魔法解除して子供作らなくっちゃ♪」
「そ、そうだね」
二年後が楽しみね♪
「あら?」
「ん?どうしたんだい?」
「ん~買い置きしていた食料の減りが少し早いみたいなの。今日中には街に行かないと明日の昼までもたないかも」
「そうなの?じゃあ、朝食食べたら向かおうか。ちょうど討伐証明も溜まってきたしね」
そして私達は街までおりてきたんだけど……。
「なんだか騒がしいわね?」
「そうだね。何かあったのかな?」
「広場の方から人が流れてるみたい。行ってみよ?」
「そうだね」
広場に行くと人だかりが出来ていた。
あれは──探し人の看板かしら?
王族の第二王子が行方不明みたいね。第一王子が病で亡くなって王位継承者がいないっと。……大変じゃない!ってあれ?
「うわ、やば」
彼が外套で顔を隠しはじめた。
ん?んんん?
看板の似顔絵を見る。彼を見る。また看板をみる……。
「え?えぇ?まさか……えぇ!?」
「ちょっとこっち来て」
彼に引っ張られて人気のない路地裏まで来る。
「ちょっと!あれどういうこと!?」
「あー、成人したら連れて行こうとは思ってたんだけどね?病にかかってたのは知ってたけど、まさか兄様がこんな早く亡くなるとはねぇ。えっとごめんね?」
「ま、まさか王族だったなんて!え、お兄様の事はよかったの?それに王家を抜け出してまで私の所に?」
「あぁ、腹違いの兄だよ。よく、子供らしくないっていじめられてたよ。まぁしょうがないよね。前世の記憶があったからさ。それに結構な悪事にも手を染めてたらしくて、毒を盛られてこの結果だよ。自業自得だね。それに王家とか王族なんかよりも僕にとっては君が大事なんだ」
「そう……。それは嬉しいけど、アナタはどうするの?」
「まぁ、こうなったらしょうがないよね。一緒に来てくれないかな?」
……はい?
そのまま混乱した頭のままで彼に連れてこられたのはこの大陸を支配している王国のお城。すれ違う人にジロジロ見られて胃がキリキリしてきた。
ちょっとそこの門番の人!私は侍女じゃなくて彼の恋人よ!たしかに今世では年上だけどぉ……。
そして通された謁見の間。
「お久しぶりですお父様。いえ、国王陛下」
そこから彼が説明したのは次の通り。
モンスターに襲われ記憶を失っていたこと。
それを私が助けたということ。
近くの広場の探し人の看板を見て全てを思い出したこと。
私が【蒼銀の魔導師】だということ。この国でも結構名前が売れてたみたい。
そして……
「僕は彼女を妃に迎えます。僕は彼女を愛しています」
──そして二年後
私は二十歳。彼は今日十五歳になり、成人を迎えた。
「大丈夫?緊張してる?」
「き、緊張どころじゃないわ……。まさかこんな事になるなんて夢にも思わなかったもの」
「そう?でも、僕は嬉しいよ。やっと君と家族になれるんだから」
そう。彼の妃にする宣言から何故かトントン拍子に話は進み、私は王族に嫁ぐための教育に追われ始めた。もちろん、私の両親も呼ばれた。泡ふいてたけど。
最初は年齢差で色々言われたけど、私と彼のイチャイチャっぷりを見られているうちに何も言われなくなったのだ。
そして今日、彼の成人と共に婚姻の儀式が行われる。大勢の国民の前で。
私専属の侍女に言われて彼と共に城のバルコニーに出る。
瞬間、大歓声が私達を包んだ。
そこで彼と向き合う。
「僕達が言うのもなんだか笑っちゃうけど、生まれ変わってもずっと愛しているよ。僕のお嫁さんになってくれるね?」
あぁ、もう。ほんとにこの人は……
「はい。私も何度生まれ変わっても愛し続けます。私を……あなたのお嫁さんにしてください」
そして私達はキスをした。
ただの村娘と村の守衛の息子だった私達が、愛し合っていたにもかかわらず、想いを遂げる事なく命を散らし、死後の世界で再び出会った。そのまま消えていく運命に光がさした。
おかげで再び今世で出会う事ができて、更には今では次期国王とそのお妃様なんてね。どんでん返しってこういうことを言うのかしら?
とりあえずここで私と彼だけの物語はおしまい。
やっぱり最後はハッピーエンドじゃないとね?
これから先はまだわからないけれど、きっともっと幸せになれる。そんな事を思いながら私はペンを置いて、すぐ隣のベッドに目を向ける。
「んん……ママァ……」
「はいはい、ママはここにいますよ」
memory fin
be reversed あゆう @kujiayuu
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