Uターンお姫様!
工藤 流優空
Uターンするお姫様は、いかが?
その日、あたしはお姫様を辞めた。あたしは、結構大きな国のお姫様だった。そんなこんなで、お姫様のあたしを花嫁にしたい男性は、たくさんいた。
王様……――つまり、あたしのお父様は考えた。それなら、この国を任せられる男に姫をやろう、と。
お父様は、あたしが16歳の誕生日を迎えた日に国中にお触れを出した。
『国の洞窟の前を守るドラゴンを倒せた者を、姫と結婚させることにする』
あたしはもちろん反対した。ドラゴンを倒せたからと言って、国の政治ができるとは限らない。それに、あたしの気持ちはどうなるのよ。
自慢じゃないけどあたし、恋愛結婚に憧れてたの。貴族や騎士との禁断の身分違いの恋も捨てがたいし、呪いをかけられた王子様の呪いを解いて結婚するのも素敵!
なににせよ、お見合いとか親が決めた相手じゃなくて、自分が好きだって思える人と結婚したい。そう思ってたのに……。
あたしはお父様があたしの意見を聞き入れてくれないと分かるとすぐ、荷物をまとめた。それなら、あたしはあたしの人生を歩んでやる。
廊下を歩くあたしの耳に、ドラゴンを倒した若者が現れたという噂が届く。多分、でまかせね。
ドラゴンが倒せなくたって困らないことは知ってる。だって、会議でお父様、
『あのドラゴンの守る洞窟の中には宝が眠っている。その宝を手に入れられれば、わしの懐があったかくなる』
って言ってたもの。お父様の懐をあったかくするために、なんであたしが好きでもない男と結婚しなくちゃいけないのよ。第一、お父様が死んでもあたしは好きでもない男と長く付き合っていかなきゃいけないのよ? こっちの気持ち考えてよね。
あたしは、真夜中にそっと城を抜け出した。目指すは、ドラゴンのいる洞窟。ドラゴンを倒されたって噂が広がってるけど、そんなすぐに倒されるはずがない。行ってドラゴンさんに危険を伝えてあげようと思ったの。
それにあたし、一度自分の目でドラゴンを見てみたいって思ってたの。お城の生活って本当に退屈で、街にも出かけられない。
そんなあたしにとって心のよりどころだったのは城の中にある図書館だった。図書館の中には、国にあるどんな図書館よりもたくさんの本が並んでる。
あたしはその中でも図鑑を見るのが大好きだった。一番好きなのは、もちろんドラゴン図鑑。様々な地方に住んでいるドラゴンを紹介しているの。
あたしは一応、図書館からドラゴン図鑑を一冊持って城を出た。いったい、洞窟の前にいるドラゴンってどんなドラゴンなんだろう。
旅人と一緒に旅をすること数日、とうとうあたしは、噂の洞窟にたどり着いたの。そこには確かに、ドラゴンが一匹入り口をふさぐように立っていたわ。
その時は、真夜中だった。あたしは物陰に隠れてドラゴンを観察していたわ。青いドラゴンで、とっても深い青色をしていた。
最初はちょっとだけ恐ろしくて声がかけられなかったんだけど、夜が明けたとき、ドラゴンが姿を消したの。そして代わりに何がいたと思う?
男の人よ。あたしはそおっと近づいて、男の人に声をかけたわ。男の人は驚いて飛び起きたんだけど、そのとたん。目の前にドラゴンがいたの。
でもドラゴンは、あたしに分かる言葉で教えてくれた。ドラゴンは昔、あたしのお父様に意見して呪いでドラゴンに変えられちゃったんだって。眠ろうとしたときにだけ、元の姿に戻れるとも教えてくれた。
あたし、ドラゴンに約束した。元の姿に戻す手伝いをするから、城を取り返す手伝いをしてってね。きっと今頃は倒してもいない勇者もどきが、あたしと結婚をする準備をして待ってる。そして王座を狙ってるはずよ。
あたしは、ドラゴンと国に戻って王様とその偽勇者を追放して、自分はお姫様に戻った。いわゆるUターンお姫様ってやつね。
あたしとドラゴンのその後? それはまたいつか、お話ししてあげるわね。
Uターンお姫様! 工藤 流優空 @ruku_sousaku
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