UからOへ ~カフェイン過剰摂取は腹痛の引き金~

九十九 千尋

当作品は、フィクション、ということにしておきたい。


「Uターン……それが三回目のお題か」


 などと、パソ前で確認をしたのは、お題発表から間もなくのことであったと思う。

 速い方が目に付く可能性はあるし、速筆賞も狙えるとあれば、そりゃ狙わない手はないだろうと意気込んだものの……


「Uターン……どんな話にしたらいいのかさっぱりわからん」


 全然ネタが浮かばなかったのである。



 そんなこんなで気が付けば三月四日は終わっており(え? ソシャゲで遊んでただろ? ……き、キノセイダヨ)、気が付けば三月五日の夕方を迎えていた。

 このままでは締め切りを過ぎてしまう。何とかネタを絞り出さねば……


 そこで、何はともあれ、インスタント珈琲を入れる。

 ここ最近は、珈琲をスプーン山盛り二杯を少量の湯で溶かして牛乳をたっぷり入れるのが常である。苦いが砂糖は入れない。

 カフェインを多く摂取することで、眠気を誤魔化す作戦だ。




 ―― そう、この話は、カフェインを取り過ぎて失敗した話である。












 さて、ネタを出さねばならないだろう。

 普通に考えて、Uターンを題材に書くなら……例えば……そう……


 勇者一行は魔王上にたどり着いた。だが何らかの理由で魔王城から取って返し、生まれ故郷の村まで戻ることにしたのだ。その理由とは……!?

 というのは、どうだろうか。

 その理由次第で、コメディにもシリアスにも振ることができるだろう。


 魔王城に着いた時、既に魔王城はものけの殻だった! なんと、勇者が来ることを予期した魔王は、勇者の故郷を襲撃し、勇者の家族を人質に取る作戦に出たのだ!

 ……んー、ダメだな。ありきたりだ。

 なにより、ボリュームが増えそうだ。ついつい文字数が多くなりすぎるのが作者の癖である。いかん。実にいかん。きっとまた4000字に収めるためにカットする作業が始まる。カットしすぎて話が残念になるに違いない。



 ――きぃゅるぅう――



 む、なんだか、胃に不快感を感じる……はて? 何かおかしなものでも食べたかな? あるいは、空腹で胃酸が出過ぎているのかな?

 などと思いながら時計を確認するに、夕方の十八時。

 いかん。間に合わなくなってしまう。また公開時間が遅すぎてPV数ゼロとかいうことになりかねん。急がねば。だがネタが浮かばん。



 そこで、二杯目の珈琲を飲む。

 二杯目の珈琲には、蜂蜜を大さじ一杯加える。苦味と共に蜂蜜の甘味が届いて、非情に落ち着く。

 カフェインにはリラックス効果もあると聞いたことがある。リラックスと眠気を覚ます効果を珈琲で、脳に必要な栄養である糖分を蜂蜜でとる。いいぞ。これでまた作業に戻れるはずだ。



 さて、では、帰る理由がコメディではどうか。例えば……


 魔王城までたどり着いた勇者一行。しかし、各々家にやり残したことを思い出した!

 鍋を火にかけたまま出てきた聖女。

 医者の予約を忘れて来ていた戦士。

 娘の誕生日を忘れていた探索師。

 そして、ベッドの上にエッチなおかずを放置してきたことを思い出した勇者。


 ……駄目だな。うん。

 そもそも、魔王城に来る前に気付けという……いや、コメディなのだからそういう突っ込みを呼ぶのが正解なのだが、そうすると一発ネタ臭がする。いや、一発ネタぐらいのボリュームの方が4000字には収まるはずだ。いやしかし……



 ――きゅぃるぅっぅっぐっぐっ――



 む……ややお腹が……お手洗いへ行かねばならないか。何か悪い物でも食べただろうか。



 などと思いながら、三杯目の珈琲……ではなく、緑茶を入れる。


 日本人は昔から緑茶を好んで飲んでいた民族であったためか、実は日本人の目覚ましには珈琲より緑茶、特に玉露の方が適しているという話がある。なぜなら、玉露に含まれるカフェインの量は珈琲の二倍以上あると言われており、これを常用していた日本人は民族的にカフェインに強めだという話がある。

 他にも、海苔を多く摂取しても胃腸で処理できるのは海苔に慣れている民族だから、とか、有名なところで他の国の人より多めにマグロなどを食べても体調を崩さないなどと言う話も聞いたことがある。……あとでこの辺は真偽を調べておこう。


 急須に茶葉を入れ、湯を入れて少し蒸らして待ってから入れる。

 珈琲は珈琲ミルが無いのでインスタントだが、緑茶に関しては急須がある。


 しかし、珈琲二杯に緑茶を急須一杯飲んだにもかかわらず、少々ダルさがある。んー、カフェインが足りないか?



 よし、ここは紅茶も一杯飲んでおこう。

 紅茶はヤカンで湯を沸かし、丸いポッドで茶葉を躍らせながらじっくり待つのが美味しい紅茶のコツである。ポッド一杯の紅茶を牛乳で割って飲むのが好きだ。美味しい。

 ちょっと、珈琲だけインスタントなのが申し訳ない気もするが、インスタント珈琲はあの手軽さが何より良いのだと個人的に思う。





 さてさて、自室に戻り、パソコンの前に座り今一度ネタを絞り始める。

 そもそも、魔王城に行く勇者一行というところから変えてはどうか。例えば、いっそ逆に、魔王が勇者の故郷の村まで出向いたところでUターンを……



 ――ぎっゅるぅぃいいぐぐゔ――



 むぅ……腹痛か。お、お手洗いへ……


 な、なんとか下着の純潔は守らr



 ――きぃぎゅるるるるどぅどぅどぅ――



 お、おおぉ……な、波が。どうして一度で全部終わってくれないんだ!






 その後、お手洗いと自室を往復することおよそ数回。お手洗いの中に、浮かんだアイデアも流してきたように思う。

 歴史に残りし聖人はお手洗いで神からの啓示を受け、偉人はお手洗いで閃いたと言われているが、それはきっと、ぽんぽんがペインしてないのが最低条件なのだろうな、などと思った。


 などと言ってる間にもはやリアルの時間は三月五日の二十三時を超えている。締め切りまで一時間を切ってるじゃないか!!

 このままでは、ネタが浮かばぬまま終わるのではないか。


 と思っていたが、いや待て。



 こうして、創作活動の際に(カフェインの取り過ぎで)失敗してお手洗いと自室を往ったり来たりしているこの状況……


 まさに! お手洗いからのUターンなのではないか!!


 よし、これを書こう。これしかないそうに違ない。おい誰だ今笑ったの。……お腹の虫だ畜生。

 話として汚いが、しかしこれしかない。もはやまな板の鯉! 野と成れ山と成れ!










 ところで、今回のこの与太話、Uターンが題材のはずなのだが、何度となくお手洗いとの間を行き来するこの様は、果たしてUターンなのだろうか……



「あ、これ、もしやUターンじゃなく……Oターンでは? ダメなのでは!?」



 お手洗いの中でそんなことを思った。

 いや、こんな下品なネタの時点でアウトだ。





 お粗末。ほんと、お目汚しで申し訳ない。




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UからOへ ~カフェイン過剰摂取は腹痛の引き金~ 九十九 千尋 @tsukuhi

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