桜花は一片の約束

PURIN

ふたりだけの、小さな約束

 ぽかぽかの陽気。空からきらきら降る光。そして、自身の枝を彩る無数の淡いピンク色。

 季節はすっかり、春。


 そろそろのはずなんだ……


 木は、自分の根元の地面を見続けていた。

 友達が約束を果たしにきてくれるのを待ち続けていた。


 焦げ茶の地面に変化はない。鳥たちの歌声や風のざわめきも聞こえないくらい、木はじっと地面だけを見つめていた。


 また会えるよね? 無事に出てきてくれるよね?

 約束したじゃないか。君にこの姿を見せてあげるって。

 「楽しみにしてるね」って言ってくれたじゃないか。

 ほら、きれいに咲いたんだよ。会いたいよ、お願い……




 あ。


 見つめる先で、土が小さくぼこりと盛り上がった。




 地面から這い出した小さなカエル。その頭に、一片の桜花がはらりと降りた。

 まだ少しぼんやりしつつも見上げた先には、たくさんの花びらを雨のように散らす桜の木。


「久しぶり」


 カエルは優しい囁きを聞いた。

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桜花は一片の約束 PURIN @PURIN1125

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