そうか。だから私も幸せだったんですね。

慕っていた祖母を失くし、第一志望の高校受験に失敗した主人公の美森とその前に現れた栗饅頭が好物の道祖神。神様が現れようが動じない美森。どうやら道祖神は亡くなった祖母のことをよく知っていたようだ。近所には弁天様もいて、同じく祖母のことをよく見かけていたとのこと。
道祖神は行き交う人の悩み事を聞いて解決する手伝いを美森に頼む。神様なのに人間を頼るのか、と美森は気乗りはしないが、なし崩し的に道祖神を手伝うことになった。そして道祖神の周辺で知り合った者たちと交流していく中で、美森は祖母の過去をたどっていくことになる。
過去を調べるヒントを示唆する弁天様と過去を知ることをやめるよう忠告する道祖神。
弁天様と道祖神のとった行動は異なるが、その根底には美森への気遣いがみえる。
祖母や母の過去を知った美森をフォローする道祖神は口は悪いがどこまでも優しい。
最終的に美森の達した心境は心に沁みるものとなりました。

『私がおばあちゃんにしてあげられたこと。
 思いっきり甘えてかわいがってもらうこと。
 それがおばあちゃんの喜び。
 しあわせ。
 そうか。
 だから私も幸せだったんですね。』

時代の変化に適応して、今ではスマホも使いこなせる神様達の軽妙でテンポの良い会話や、神様たちの俗物的な面で笑いを取りながらも、コロッケを家族を結び付ける象徴として描き、ほろりとさせるまさに笑いと涙の人情物語です。読後、無性にコロッケや栗饅頭を食べたくなるかもしれません。
皆様是非、ご一読ください。