愛すべき不思議な家族

作者 鳴沢 巧

35

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★★★ Excellent!!!

本作を一言で言えば、まさにタイトル通りの『愛すべき不思議な家族』の物語です。
序盤は作品紹介にある通り、女児の葉月と春道との邂逅から始まる物語はいくつかの出来事を経て、ぎこちないながらも疑似家族から家族へと昇華していく様が描かれます。過酷な葉月の生い立ちと人生を娘の葉月にかけた和葉との母娘関係確認プロセスが序盤の読みどころになるでしょう。
多くの作品ではここまでで「めでたしめでたし」と物語を終えてしまうのですが、この作品は本当の家族へと一段上の状態に高められた「葉月の小学校編」以降、物語の様相を変え、この家族とその周辺の人々が織りなす素敵な青春ドラマであり、ホームドラマとなります。
序盤の出来事を乗り切った家族は一層深くつながることとなり、その周囲には引き寄せられるように数々の個性的で楽しい人たちが集まります。このため、物語の視点はスポットの当たる登場人物視点であったり、いわゆる神の目線であったりしますが、話のつながりは自然なため、違和感なく読み進められます。
そうして、作中では季節が繰り返しめぐり、時はどんどん過ぎていきます。出会いも別れもあります。変化していくもの、変わらないもの、継がれていくものが描かれますが、本作品はこうしたストーリー展開だけでなく、登場人物間の濃密な結びつきが読み手をとらえる一つの魅力になっています。
この登場人物たちの結びつきは自然発生的でも、以心伝心でもありません。時には言葉で、時には態度で互いの気持ちを伝え確認しあう努力の上で時間をかけて醸成された信頼なのです。言葉の選択を誤ったり、必要な言葉をかけられなかったり、また感情の赴くまま行動して失敗することもあります。
夫婦であっても、親子であっても姉妹であっても、そして友人であっても、この物語に登場するキャラクターは言葉と行動で意思を伝えあい、そしてそれを受け止めて相手を理解して結びつきを強め… 続きを読む