桜花は一片の約束
新吉
第1話桜花はいっぺんの約束
桜花一片に440円
君に会うための願いを
君一片に願いを
桜花に会うための440円
ここはちょっと有名なお花見会場だ。桜が満開になるのはまだ先だから人はまばら。日ごとに人が増えていた。桜並木の景色の先には海が見える。そして海の先にはいつもどおり空が続いていく。本日は快晴、きっと今日咲きだす桜も多いんじゃないだろうか。
「お団子5本で440円になります」
「はーい」
団子を食べる人、お酒を飲む人、出店も多くて花を見る以外の楽しみ方をする人も多い。
団子屋から少し離れた海が見えるベンチ。そこにはおばあちゃんが座っていた。白髪で、まだ少し寒いからひざ掛けをしていて、かばんと杖が置いてある。しばらく座っているからか頭やひざに桜の花びらがいくつか積もっている。その少し後ろで高めの石に腰かけた女性がスケッチをしていた。派手な髪型と服装で少し寒そうだが、絵はとても優しそうなおばあちゃんを描いていた。
「おばあちゃん!」
「!?」
うたた寝でもしていたのか呼びかけにびっくりして起きるおばあちゃん。花びらが舞う。それが嬉しかったのかにこにこと笑う。
「おばあちゃんのこと待ってるんですよ」
若い女性はおばあちゃんと手を繋ぎながらゆっくりと歩いていく。絵を描いていた彼女はスケッチブックを閉じ、ベンチへ。
そこには丁寧な字で書かれた紙が置いてあった。
『また明日も描いてね』
「起きてたんだ」
それは柄で溢れたジャンパーのポケットに入った。
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