第3話桜花は一片の約束

 一夜のレモン味

 夕紅とキリトリセン


 一夕のキリトリ味

 夜紅とレモンセン



 隔日の彼女とのインタビュー、第2回には桜は満開になっていた。そのためカフェへ場所を移すことになった。



「いやあ、にぎやかですね」


 一週間くらいしたらまた落ち着きますよ


「そうですね、今日は前回途中だったイカから」


 ああ、一夜干しにされたイカを食べてと言われて。私は自分がお腹が空いていることに驚きました。それが美味しそうなんです。はじめは一緒に泳いでいたので抵抗がありましたが、一度食べてしまえばありがたく頂くようになりました。


「以前は何を食べていたんですか?」


 何も。今ではプランクトンを食べていたんだろうなあと。


「今好きな食べ物は?」


 焼き肉です。時々豪華なんですよあそこ。


「親父もです。実は僕の父もそこにいます」



 いつの間にかいるお世話係さんが施設に戻る時間ですよ、と止めに入るまで続く。若い女性で、彼女の小説『レモン味の夢食い』がお気に入り。


 第3回では会って早々に元気な妹さんとおいっこさんね、と言われた。



「あなたに会うの、とても楽しみです」


 こっちの台詞ですよ、とても楽しいです。


「今まで存在すら疑ってました」


 ここにいるようで、実はいないのかもしれない。


「夢食いとアリクイの!」


 そう。いるのにいないことに、食べないのに食べることになって、似た名前の何かになる。



 夕暮れの笑顔が悲しそうなのは、今までそういう風に切り取られたことがあるからだろう。

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