安定の文体と爽やかな読後感

  • ★★ Very Good!!

タイトルの「輪廻転生」が厳密な意味ではその言葉が示すもともとのイメージと「ズレ」を多少、感じましたが、今の段階で、こういう本作の中のように表現される現象を上手に説明する言葉は存在しないと思います。(自分が知り得る限り)

自分と同じような魂のグループに生きているパラレル・ワールド(並行世界)の人間に憑依、パラサイトしてその本体と融合されたら、こんなふうに先に死した人の想いを上手に繋げることができます。

時間軸では、自分が死ぬ前から、次に憑依することになる肉体はすでに生を受けているので、「輪廻転生」とは厳密に言いにくい。

もともとの肉体を使っていた持ち主と、後から憑依した「亡くなった前世を覚えている魂」が一つの身体を巡り、喧嘩することなく融合してしまうと、ある種、永遠の生命をシュチュエーションや環境を変えながら、体現できるのでね……。短い物語の中に、その現象をわかりやすく、上手に表現されていて、すごいと感じました。

主人公の高校生が自分の彼女のお父さんの「生まれ変わり」と意識せず、「この記憶は外から憑依された他の魂の記憶」と認知すれば、全く別の物語になると思います。

だからこの展開、結末、とても読後感が良いものになってますね。自分の娘と知りながらそのまま付き合い、妻とも関係持ったら、とんでもない物語になってしまう!(苦笑)

とても穏やかでわざとらしくない、美しい文章でその安定感がすごく勉強になります。

作者は、かなり大人の方なのでは……