第7話 記憶

「それについては僕が説明するよ。」


俺に握られていた刀が光り、形を変えていく


真っ赤な体のドラゴン?なのかわからないが、パタパタと飛んでいる


「貴方は!?紅丸じゃない!?」


「久しぶりだね、あずみ。」


どうやらお互いを知っているらしい


「あずみ、驚かないで欲しいんだけど、この男が君の探しているカズキお兄様なんだよ。」


「な、なにを言ってるのよ!カズキお兄様は紅髪だし、それにこんな子供じゃないわ!」


確かに俺は黒髪だが、高校生なんで子供っていうわけではないんだけど…


「まぁ信じないよね。じゃあマスター、僕にさっきみたいに力を込めてみてよ。」


紅丸は再び刀に戻り、俺に握られる


「こ、こうか?」


俺は力いっぱい紅丸を握った


痛い痛い痛い!違うよ!腕力じゃなくて、心の力!


…心の力?


そう、さっき殺す覚悟をしたでしょ?その時の事を思い出して、僕に力を流して。


殺す覚悟…俺は殺す覚悟をしたわけじゃない

俺の家族や友達を守り切る覚悟をしたんだ

その時の気持ちを思い出し、俺は紅丸を握る


ブオッ


紅丸から炎が噴き出て、俺の身体を包んでいく


「…!?」


あずみは俺の頭を見て驚愕している


「なんだよ、なんか頭についてるのか?」


「カズキお兄様と同じ…紅髪…。」


どうやら炎が俺を包むと髪の毛が赤くなるらしい

どんどんわけがわからなくなっていく


「でも…毛先は真っ黒じゃない!やっぱりカズキお兄様じゃないわ!」


「これはね、【呪い】なんだ。カグヤ様のね。」


カグヤ様…姫様…


ズキン


「ぐっ…あぁぁ!」


いつもの頭痛よりも激しい痛みが襲う

意識が…朦朧としていく…


-----------------


「どこだここ…。真っ暗だ。」


気が付くと真っ暗闇の中に立っていた

辺りには誰もいない

ひんやりとした雰囲気、闇に押しつぶされそうだ


「…ズキ、カズキ…。」


どこからか俺を呼ぶ声がする。


「…貴方が…終わらせて…。」


夢と同じことを言われる


「…いい加減にしてくれよ、一体俺がなにを終わらせるんだよ!」


俺は苛立っていた

ここ数カ月間の悪夢

先ほどまで起こっていた戦い

正直疲れていた


「…もう貴方しか…守れない、だから…終わらせて…。」


「ふざけるな!」


ブォン


俺の怒りと呼応するかのように身体が熱くなり、先ほどと同じように炎が俺を包む


「好き勝手言いやがって!守るってなんだよ!終わらせるってなんだよ!」


「…めんなさい…ごめんなさい…。」


ふと声がする方を見ると、黒髪の女性が立っていた

俺は女性を見ると視界がぼやけてきた


「…!?」


気付くと俺は涙を流していた


「カズキ…ごめんなさい…。」

女性も泣いていた


「どうしちまったんだよ…俺…。」


涙が止まらない

悲しいわけじゃない、寧ろ喜びの感情が込み上げてくる


「私の【力】で【あの人】を殺して…貴方じゃなきゃできない…。」


そう言って女性は消えてしまった


「…姫様…姫様!」


俺は訳もわからず叫んでいた

その時に感じた既視感

俺はどこかで同じ経験をしている

でもこの世界じゃない

別の世界での出来事なんだ


そう感じた瞬間、辺りが急に輝きだし

今まで見えなかった周辺が見えてきた


俺は広い和室にいた

畳の匂いがする

それがまた懐かしく、涙が流れた


ここを俺は知っている

そう感じた俺は懐かしく物悲しい気持ちでいっぱいになり

涙が止まらなくなってしまった


必死に腕で拭っても溢れる涙

ぼやける視界の中で俺は机に置いてある箱に気付いた


「ただの箱…だよな?」


なぜか気になって仕方がない

溢れだした涙も止まっていた

今はあの箱を空けたいという気持ちしかない


「なんか勝手に人の家の物を漁るみたいで嫌だけど…少しくらい良いよな。」


そう言って俺は箱に近づき、手を伸ばした

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

紅と黒 sukeranke @yubacat

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ