第6話 お迎え

刀身は激しく燃え上がり、空気中の水分が蒸発していく


「悪いな金子、多分…俺がお前を巻き込んだんだ。だから…俺が解放してやるよ。」


刀を鞘に一度戻し、力を集中させる


「鬼神流…鬼纏【一閃】」


俺は金子に向かって全力で踏み込み、鞘に溜めた力を爆発させ、刀を振りぬいた


ズバッ


金子は胴体から真っ二つに切れ、胸あった石は粉々に砕けた


「グァァァァ!セッカク…ニンゲンノ…カラダヲ…!」


石の力がなくなり、金子は普通の人間に戻っていく

それでも炎は消えない、金子の身体がどんどん燃えていく


「ごめんな…そうなったらもう…戻れないんだ…。」


昔何度も見てきた、あの石を使ったらもう戻れない

魂は侵され、肉体は滅びていく

もう金子の魂はこの世に存在しない

あるのは金子の形をした【ナニカ】だ


「カズキ…くん…。」


「!?金子!!意識があるのか!」


俺はとっさに金子の所に駆け寄った


マスター!ダメだ!


紅丸が俺を制止する


「カズキ…クン…オマエモ…ミチズレダ!!」


金子の身体を突き破って刃が出てきた


まずい…躱せない…!


「愛の矢!」


突如上空から光の矢が降り注ぎ、刃を撃ち落とした


「危なかったぁ…まったく、なにを考えてるのよ貴方!具現化したらもう元には戻れないって常識でしょ!」


声がする方を見ると、そこには一人の女性が弓を構えていた

誰かはわからない、でもなんだか懐かしい声だ


「クソッ…コロセナカッタ…」


金子がどんどん崩れていく


「金子…ごめん…俺のせいで…!」


「せめて痛みを感じることなく、消えなさい。」


女性がそういうと、金子は光に包まれていく


「アァ…アタタカイ…」


金子はそのまま消滅した

後には黒い石が落ちていた


「…くそっ!また守れなかった…!」


「しょうがないわよ、あぁなったら誰も戻れない、その事実に例外はないの。」


女性が俺の近くに降り立って諭すように話してくる


「わかってる!でも金子は…俺がいたからこうなった…俺がいなければ…!」


「…男のくせにメソメソと、馬鹿みたい。」


なんだこいつは、初対面なのに随分と失礼な奴だ


「誰なんだよ、お前。」


俺は女性に向かって睨みつける

栗色の髪、それに和装。こんな人に会ったことないはずなのに、どこか懐かしい。


「私はあずみ、貴方を迎えに来たの。」


あずみ…聞き慣れた名前だ…だが、俺を迎えに来たってどういうことだ?


「せっかくカズキお兄様を迎えに来たのに、全然人違いじゃない、来るんじゃなかった。」


「カズキお兄様?」


「そう、凛々しくて勇ましくて超綺麗な紅髪のお兄様よ!まったく、博士にガセネタ摑まされたわ…。」


「カズキ…お兄様…。」


頭に映像が流れてくる

これは…家の縁側か?


「あずみね!大きくなったらカズキお兄様のお嫁さんになるの!」


栗色の髪の少女が俺の膝の上で話しかけてくる


「そうか、ありがとうな、あずみ。」


少女の首にはダイヤの様なアザがあった


-------------


「ちょっと、聞いてるの!?」


俺はあずみの大声で現実に戻された


「なんで私が貴方みたいなボーッとしてるへなちょこ剣士を迎えに来なきゃいけないわけ!?」


どうやらお目当てのカズキお兄様じゃなかったことに相当腹を立ててるらしい


「お前ってさ、もしかして首にダイヤみたいな形のアザある?」


「え…なんでそれを貴方が知ってるの…村のみんなしか知らないはず…。」


「俺もよくわからないけどさ、見たんだ、記憶の中で。」


「なによ、その記憶の中って。」


あずみが疑いの目で見てくる

俺もよくわからないんだけどな…

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