第43話 2046年11月(竜神池3)
「ガルッ…ウガァァァー‼」
獣の唸り声、それは威嚇でも恐怖でもない。
(怒り…か)
ユキが身体を霊獣に委ねた。
(形勢逆転か…)
ユキの身体から後方へ飛び退った僕を間髪入れず追従してくるユキ、いや霊獣『夜叉丸』
(体は何か所か骨折しているはず…だよな…ったく)
思い返せば、最初からコイツは厄介な相手だった…。
霊獣は本来、荒ぶる魂、人間が制御できるものじゃない。
純然たる本能なのだ。
ソレ自体に善も悪もない。
「サタン…」
自分に向けられる禍々しく威圧的な憎悪、憤怒の化身『サタン』と評するに遜色なき姿。
白き巨獣を憑依させた『朝倉ユキ』の姿、数十年ぶりに見る破壊の化身は、歳を経て禍々しい魔神のようだ。
(紛い物…ゾディアックを模しただけの12宮の化け物、この程度じゃ勝てないか…)
ヴァリニャーノの張り詰めていた気がフッと途切れた…その瞬間、ユキに肩口を食いちぎられた。
途切れかけた意識が痛みで再び繋がる。
(紛い物にも、それなりの意地がある!!)
左腕は、すでにぶら下がっているだけ、残った右腕に意識を集中させ、半獣となったユキの後頭部を自らの胸に押し付けるように抱き込む。
ユキの四肢、鋭い爪が身体に食い込み、胸には牙が突き刺さる。
血塗れのヴァリニャーノの目が見開く。
(これなら…死んでくれるかい?)
ガチッ‼
奥歯を自らへし折るように歯を噛み合わせた…
PiPiPi
小さな電子音が身体の中で反響する。
「バイバイ…ユキ」
小声で呟いて目を閉じ身体の力を抜いた…大気に身を預けるように…
BoM…
重い破裂音が大気を揺らした。
地に伏せた血だらけの獣は荒い息の合間に大量の血を吐き出し、動かなくなった…。
………
目を覚ましたユキは白い天井を、しばし見つめ、両手の指を眼前に近づけて、少し動かしてみた。
「医療センター…生きてる…」
身体に取り付けられた医療器具を乱暴に外し、ベッドからヨロヨロと立ち上がり、時計を確認する。
14:28…曜日も日付も解らなければ、ソレに意味はない。
混濁とした微睡のなか、ひとり目覚めたユキが最初に目で探し始めたものは…
(いないようだ…)
実体がないようで、その実、質量がない存在ではない。
無意味に広い部屋、天井の角にカメラが4台、死角のない状態で備え付けられている。
少しづつ頭の回転が戻りだす、部屋を見回せば病室というより隔離部屋のような気さえする。
そもそも、この部屋にはドアがない。
「俺は、どこに連れてこられたんだ…」
ゾワッ…身体中に寒気が走る。
「俺は…さっき誰を探した?」
龍神池サーガ 最終章 完
DuH (竜神池4) 桜雪 @sakurayuki
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