日陰で生きる者の小さな幸せと、救いの物語。

 社会の歯車から取り残されたかのように、ひっそりと生きていく紫さんの話です。

 そんな日陰で生きていく者が感じる挫折と絶望から始まり、それが開き直りと強かな生活へと続き、やがて自分自身を見つめ直し、今の状況を乗り越えようとする一連の出来事を繊細な筆致で描いているのが魅力の物語です。

 特に、代わり映えのない日常でも、その中で起きる小さな波紋を丁寧に拾い、それがひとりの人間を変化させていく……そういった話の運び方が上手いと感じました。

 シリアスあり、笑いあり、痛快さあり、考えさせるところありで、読み応えのある作品でした。

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