新聞配達 エッセイ

 購読契約のお礼として、新聞配達員のお兄さんがくれたのは体脂肪計付歩数計だった。さっそく体脂肪率を測ってみることに。私は一五パーセント。やや痩せ気味らしい。母は三五パーセント。肥満のランプが点滅した。

「本気でダイエットしようかな」と母が呟いた。具体的な数値を見せつけられて、自分が太っている事実をようやく受け入れたらしい。

 そう言えば、新聞配達員のお兄さんはとても痩せている。脚本家になることが夢で、専門学校の学費を稼ぐために仕事をしている。静かな夜。私が某企業のエントリーシートを書けないでいると、いつの間にか朝刊を持った彼が玄関前に現れる。午前四時。私は「彼の夢も叶いますように」と祈りながら去りゆくバイクを見送る。

「どうしたら痩せられるかな」という母の問いに私は、

「夢を持つこと。そして出来れば新聞配達をすること」と言ってやった。

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掌小説(習作) ボクと雲の鳥の話 66号線 @Lily_Ripple3373

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