掌小説(習作) ボクと雲の鳥の話

66号線

ボクと雲の鳥の話

「ボクにそっくりだ」
 


 目が覚めて空を見上げると、鳥のかたちをした雲がぽっかり浮 いていた。スズメのボクは小さいけど、雲の鳥は鷲ほどに勇ましい姿をしていた。

 西から来る風に乗ってゆったり飛んでいく。 ボクはすっかり雲の鳥に夢中になってしまった。

 あの雲の鳥はどこに向かうのだろう。追いかけてみたい。

 スズメのボクは羽をひたすら動かして大空へ羽ばたいた。どんどんと遠ざかる地平。 止まっていた木が小さく見えてきたころ、ちらりと光を発する 存在をボクは見逃さなかった。人間の男が空を見上げている。なにかを持って夢中で操作して いるが、ボクにはよく分からなかった。
 



 雲の鳥まであと少し。富士山がうっすら望める高さまでボクは飛んでいた。

瞬間、突風が雲の鳥とボクを襲った。
 


 ゴォッ
 


 ボクはひたすら羽で抵抗した。 雲の鳥ははるか遠くまで飛ばされ、跡形もなく消えた。
 


 ボクは泣いた。


 ガッカリしながら地上まで降りてくると、さっきの人間がいた。


涙を隠せないボクに人間の男は一枚のなにかを差し出して見せ てくれた。
 


 そこにはボクと雲の鳥が、一緒にいつまでもいつまでも飛んでいた。

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