掌小説(習作) ボクと雲の鳥の話
66号線
ボクと雲の鳥の話
「ボクにそっくりだ」
目が覚めて空を見上げると、鳥のかたちをした雲がぽっかり浮 いていた。スズメのボクは小さいけど、雲の鳥は鷲ほどに勇ましい姿をしていた。
西から来る風に乗ってゆったり飛んでいく。 ボクはすっかり雲の鳥に夢中になってしまった。
あの雲の鳥はどこに向かうのだろう。追いかけてみたい。
スズメのボクは羽をひたすら動かして大空へ羽ばたいた。どんどんと遠ざかる地平。 止まっていた木が小さく見えてきたころ、ちらりと光を発する 存在をボクは見逃さなかった。人間の男が空を見上げている。なにかを持って夢中で操作して いるが、ボクにはよく分からなかった。
雲の鳥まであと少し。富士山がうっすら望める高さまでボクは飛んでいた。
瞬間、突風が雲の鳥とボクを襲った。
ゴォッ
ボクはひたすら羽で抵抗した。 雲の鳥ははるか遠くまで飛ばされ、跡形もなく消えた。
ボクは泣いた。
ガッカリしながら地上まで降りてくると、さっきの人間がいた。
涙を隠せないボクに人間の男は一枚のなにかを差し出して見せ てくれた。
そこにはボクと雲の鳥が、一緒にいつまでもいつまでも飛んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます