【16-10】手違い 4

【第16章 登場人物】

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【地図】ヴァナヘイム国 (16章修正)

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「どうして、俺たちまで」


「や、やめろ」


「ほ、砲撃をとめろッ」


「帝国のヤツら、何を考えているんだ!?」


 翌朝、丘の上に向けて叫んでいたオジエ=アヴァロン准将等は、次の瞬間、爆風になぎ倒された。



 帝国軍の背後では、アルベルト=ミーミル麾下・反乱軍に続いて、エーミル=ベルマン麾下・王城守備兵が、となっていた。


 前者は、北東A砦への撤退が間に合わず、帝国軍の砲弾の雨により壊滅した。


 後者は、B砦脇にて既に反乱軍に打ちのめされたあとだったが、同じく砲弾の飛来がとどめになった。



 反乱軍ミーミル王城守備兵ベルマンを片付けた帝国軍は、西進した。


 そして今度は、アヴァロン准将麾下・討伐軍別動隊にも砲弾を振りかけ、混乱と恐慌に包んでいる。


 彼らは、関堤から出て来るはずの反乱軍を包囲・殲滅すべく、A砦への道中に布陣していた。


 ところが、そこへ突然出現したのは、反乱軍ではなく帝国軍であった。


 帝国軍は、ミーミル・ベルマン両隊と同じ段取りで、アヴァロン隊の始末に取り掛かる。それは、かの国の機械工業が得意とする、流れ作業そのものであった。


 帝国砲兵たちは、新たな目標に向けて車軸を動かし方位や射角など諸元を調整していく。


 この地域も焼け果て、噴煙くすぶる荒土となるだろう。



「今度はが大きいからな。榴散りゅうさん弾を試すにはうってつけだろう」

 セラ=レイスは、焼き菓子片手に、双眼鏡を前に構えたままだ。


 帝国陣営から飛び立った砲弾は、上空に舞い上がると、飛距離短く丘陵足下に落ちていた。


「……いま試射している砲弾はどこのヤツだ」


「ルクタ社製のN32号です」

 副官のキイルタ=トラフはファイルを紐解き、上官の質問に即座に応じる。


 馬上の紅毛の青年参謀は舌打ちすると、焼き菓子で眼下を指して口を開く。

「不発弾が多すぎる。こんな不良品しか造れんようじゃ、うちでは採用せんと担当者に伝えとけ」


 トラフは感情薄い表情のままうなずくと、ルクタ社の資料に大きく✖印をつけた。



 反乱軍と討伐軍が争った戦場は、帝国系武器製造会社による実弾試験場となっていた。


 上空には、ルクタ社に続き、グレドネ社の砲弾が放たれはじめている。


 その落下先では、阿鼻叫喚の坩堝るつぼと化していた。やや上空で破裂した無数の散弾が、アヴァロン准将麾下の頭上へ容赦なく降り注いでる。



「……手違いだ」

 帝国軍としては、反乱軍を狙っていたのだが、王城守備兵や討伐軍を誤射してしまったという体で押し通すつもりらしい。


 関堤だけを解体するはずが、で砦まで壊していたように。


【14-26】和議締結 《第14章終》

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【15-9】父娘

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 レイスは双眼鏡を下ろすと、軍服を軽くはたき、菓子くずを振り落とした。






【作者からのお願い】

「航跡」続編――ブレギア国編の執筆を始めました。

https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


宜しくお願い致します。



「航跡」第1部は、あと少しだけ続いていきます。


砲弾試験をする余裕まで生じていた帝国軍に複雑な思いを抱かれた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758


レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「宮殿陥落」お楽しみに。


帝国兵は王宮もうかがった。


下衆げすども立ち去れ――女侍従長・レスクヴァ=フリデールだけが宮殿の入口に立ち塞がったが、帝国下士官の銃剣で薙ぎ払われた。

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