【14-2】埃を払う
【第14章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054894256758/episodes/16816927859156113930
【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625
====================
帝国暦383年11月13日以降、ヴァナヘイム軍は、全面的な後退を余儀なくされていた。
帝国軍の圧倒的な火力の前に、ミュルクヴィズ・ストレンドで彼等は一敗地に
その結果、広大なイエロヴェリル平原の戦線を維持できなくなったためである。
【13-11】正規兵と特務兵 上
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700428226585378
【13-21】悲報
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817139555879922192
ヴァ軍に残された選択肢は、元居たケルムト渓谷に逃げ戻るほかなかった。押し寄せる帝国の大軍に、残存兵力を結集してささやかな抵抗を示すのだ。
だが、尻尾を巻いたような友軍各隊とは一線を画し、ヴァ軍の
ドリス城塞北門で、火炎から逃れようとした帝国軍第7旅団へしたたかに出血を強いた後も、彼等は己の役割を忘れなかった。
街道脇の農村や古城に籠っては足止めを強い、機を見てそれらから果敢に突出するなど、後続の帝国軍第4・第5旅団を散々悩ませた。
しかし、後備えは2隊存在するとはいえ、両隊とも所詮は大隊規模に過ぎない。帝国軍の分厚い陣容の前には、鉄壁に卵を投げつけるようなものであった。
彼等は、次第に数を減らしていく。
友軍に壊滅的な被害を与えた挙句、自団にまで浅からぬ損害を与え続ける彼等は、帝国軍第4・第5旅団の怒り・憎悪を一身に向けられる結果となった。
しかし、驚嘆すべきことに、彼等は残り数十名になっても、職責を全うせんとした。北上しようとする帝国軍にすがりついたのである。
終いには、自らをすり潰すようにして、彼等ヴァナヘイム軍・後備えは果てていった――肩についた
帝国軍は北上する。ヴァーラス城塞を再奪取するや、イェロヴェリル平原に点在する諸都市も再び
この1年だけで、平原の領有者は二転三転したことになる。
ヴァ軍によって放棄された街や城では、逃げ遅れた者たちがことごとく帝国軍による略奪の的となった。
なかでも、ヴァーラス城の領民は悲惨だった。
この年の2月はじめに攻め落とされた際は、軍紀にうるさい帝国軍参謀長・スタア=オウェル中将によって救われたのであった。
領民は城下の街に残っても略奪禁止令によって守られた。そればかりか、北の諸都市へ逃げる機会まで与えられたのだった。
【1-1】 オウェル
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816452221247587534
その後、9月下旬にヴァナヘイム軍率いるアルベルト=ミーミル大将が、ヴァーラスを取り戻した。その快挙は大々的に報道され、避難していた者たちがこの城郭都市へ戻りつつあった。
【12-19】英雄から軍神へ 上
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700428118712594
ミーミル将軍は、不敗の名将だった。
新聞各紙が「反撃の象徴」として称えたこの栄光の城は、未来永劫の安全が約束されたものだと、領民たちは無条件に信じ込んでいた。
そんな矢先のヴァ軍の全面撤退である。おまけに再び押し寄せた帝国軍――その参謀長は、もはやオウェル中将ではなかった。
過日、略奪を免れ、無傷の財産を抱えているヴァーラス領民は、帝国軍の現地調達におあつらえ向きであった。
ヴァ国の「救国の英雄」・「軍神」から見放されたという事実を呑み込めないまま、帝国の略奪禁止令が有効だと信じたまま、領民たちは奪われ、犯され、殺されていった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
今話に登場したヴァナヘイム軍・後備え2大隊とは、ヒューキ=シームル少佐・ビル=セーグ少佐たちのことでした。
【13-24】後備え 下
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330651631697292
彼等は自らの命と引き換えに、ヴァナヘイム軍撤退の時間を稼ぐことに成功しました。
奮戦むなしく潰えた階段将校たちを称えたいと思います。
【予 告】
次回、「一筋の赤い風 上」お楽しみに。
カメラは火計後のドリスへ――帝国軍はレイスたちにフォーカスします。
蜂蜜色の頭髪の合間にのぞく後輩のあどけない寝顔を見届けると、彼女はそっと洞穴を抜けた。
目当ての
今回の数々の失態を理由に、彼女は自身の降格処分を申し出た。蒼みがかった黒髪は、闇夜に溶け込もうとしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます