【13-24】後備え 下

【第13章 登場人物】

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【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625

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 このドリス城塞に残り、帝国軍を食い止める――ヒューキ=シームル少佐とビル=セーグ少佐が、後備あとぞなえの担い手として志願した。


「貴官たちか……」

 ミーミルは、2人からの申し入れを裁可すべきか即断しかねた。


 これまでの「階段将校」コンビの活躍は、ミーミルも心得ている。両大隊は、絶妙な呼吸で兵馬を動かし、後備えとして申し分のない働きをしてくれることだろう。


 だが、強大無比な敵の前に、たかだか大隊程度の戦力で立ちふさがるなど、無謀極まりない。生還は絶望的だろう。


 そのような役目を、30歳にも満たない若者たちに負わせることに、総司令官は決断を下せずにいた。


 下士官・兵卒・特務兵といった階級や境遇の垣根なく――配下の者たちと分け隔てなく――接することの出来る彼らは、この先、ヴァナヘイム軍にとって、ますます大切な存在となろう。


【13-13】正規兵と特務兵 下

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 何より、「階段将校」たちや軍務次官と過ごした時間は、ミーミルにとってかけがえのないものであった。公務に私情を挟むつもりはないが、彼も感情のある人間なのだ。


【10-4】 猛訓練 上

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【10-15】 おでこ 《第10章終》

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 再び時が停止したかのような軍議の場に、血相を変えた伝令兵が飛び込んでくる。

「申し上げますッ」


 総司令官と階段将校たちを除き、全員がそちらに視線を向ける。


「帝国軍先遣隊、カイサに到達しましたッ」

 斥候兵は、残酷な事実を伝えてきた。


 カイサは、ドリスから南西70キロ先の街である。もはや時間はない。



「俺ら阿呆だけど、また分かりやすく教えてくださいよ」


「俺ら馬鹿だけど、大将さんの指示どおり、きちんとやってみせますぜ」


 言葉も視線もぶれることなく、2人の若者はまっすぐに訴えてきた。


 逡巡しゅんじゅんする指揮官の内心を見抜いているようでもあった。




 ヴァナヘイム軍では将校の多くが戦死し、他に適任と思われる者はいない。


 帝国軍先遣隊による、このドリス城塞接触まで、時間も残されていない。






「すまない……」

 ミーミルは眉間にしわ寄せ、両目を強くつむった。






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


階段将校たちの覚悟を感じていただけた方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします

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ミーミルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「悪夢」お楽しみに。


空気をビリビリと震わすは、麓から迫るヴァ軍の喚声。

無数の銃声が足下に迫る――発砲音のみならず、跳弾音まで。


――このままでは……分断される。

モアナは、奥歯が割れるほど、強く噛みしめる。


「ヴァナヘイム軍、来ますッ!!」

林立する「二枚斧」の旗印が一塊となり、こちらに打ち寄せて来る。

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