【13-13】正規兵と特務兵 下
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644
====================
一連の騒動――正規兵と特務兵の衝突――は、各部隊で確認され、ヴァナヘイム軍総司令部にも次々と報告がもたらされた。
それは、看過できぬ件数に及んでいる。
そのため、アルベルト=ミーミルは人目を避けて、各隊の様子を見て回ることにした。こうした総司令官のお忍び行動にも、幕僚たちは慣れたもので、参謀長・シャツィ=フルングニルは、己も帯同すると申し出る始末であった。
【10-1】 小さな凱旋 上
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927861948098424
どの部隊においても、殺伐とした雰囲気が漂っていた。総司令官一行が呼吸すら
しこたま殴られたのだろうか。顔に
しかし、何度目かに、さしかかった大隊は雰囲気を異にしていた。
階段将校――ヒューキ=シームル少佐とビル=セーグ少佐の2部隊であった。
両部隊とも、殴打された特務兵の姿はまったく見られず、物々しい空気も漂ってはいない。
「シームル隊とセーグ隊は、問題なさそうですね」
フルングニルは、ホッとした表情を浮かべて総司令官を振り返った。
他の部隊では、ことごとく重苦しい空気に当てられ、ここに来てようやくひと呼吸置けたような気分である。
「……」
参謀長の説明に、ミーミルは微笑を浮かべ、小さくうなずいただけだった。
この「階段将校」たちの率いる部隊は、数多の激戦区をくぐり抜けてきたため、所領から従軍している下士官や兵たちは少なくなっていた。その分、特務兵が多く補充されている。
つまり、兵卒の構成割合が他部隊と異なるのだ。ここでは多数派の特務兵がやりこめられることはない――だが、ミーミルは、そのようなつまらないことを口にするつもりはなかった。
実際、両隊の前に臨み、そうした数の事情以上に、温かい雰囲気に触れることができた。指揮官2人のキャラクターからだろうか、あっけらかんとした空気すら立ち昇っている。
「……」
両隊に向けて、総司令官は柔らかい視線をいつまでも向けていた。それに応えるかのように、話し声が聞こえて来る。
「自分たちの指揮官は、総司令官閣下ではなく、少佐殿です」
「そいつぁ、嬉しいことを言ってくれるね」
防護柵と防弾盾の向こうでは、下士官たちが両少佐と言葉を交わしていた。
「お前たちがいなかったら、戦果を上げるどころか、
セーグが両隣の下士官たちと肩を組むと、自然と円陣のようなものが出来上がる。
そうだったな――シームルが、脇にたたずんだひときわ若い下士官の肩に手を置く。
「命を落としていったヤツらを忘れちゃいけない……お前の兄貴・オーベリソン、それにロースバリ、サンダール、ヘルバリ……忘れるわけがない」
階段将校たちの言葉には、表面的なものではなく、苦楽をともにした将校ゆえの――下士官・兵卒のために上層部にも食って掛かってきた2人だからこその――重みと説得力を伴った。
そうした上官の言葉に、下士官たちは感極まったのか、そのまましゃくり上げるように泣き始める。
「俺たちの後ろには、帝国軍を喰い止められるヤツはいねえんだ」
「だから、思うところはいろいろあるだろうが、もう少しだけ俺たちについてきてくれ」
階段将校2人の呼びかけに、下士官たちは無心でうなずくばかりである。総司令部の命令と同じことを言われているのだが、彼等は心底納得したようだった。
「……両少佐に、ご挨拶なさいますか」
フルングニルは、しばらく階段将校の部隊にとどまるか、総司令官に尋ねる。
「いや、やめておこう」
ミーミルは表情を和らげると、騎上に戻った。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
階段将校の両部隊の雰囲気にホッとされた方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
ミーミルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「臆病者 上」お楽しみに。
撤退を急ぐヴァ軍のもとへ、ストレンド城塞のリーグ=ヘイダル少将より、急報がもたらされる。「我、帝国軍に包囲されつつあり」と。
「ストレンドに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます