【13-14】臆病者 上

【第13章 登場人物】

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【地図】ヴァナヘイム国

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644

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 エドラを放棄したヴァナヘイム軍は、帝国暦383年11月7日、城塞都市・ドリスを目指し、後退していた。


 馬上、総司令官・アルベルト=ミーミル大将は、前方を見据える。兵馬から小荷駄隊までが延々と列をなし、街道を北上していく。


 アッペルマン少将麾下が、ミュルクヴィズの都市ごと壊滅させられたことについては、もはや否定のしようがなかった。


【13-11】正規兵と特務兵 上

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 それだけ、帝国軍は従前を大幅に上回る勢力をもって、反転攻勢に打って出たということだろう。これまでの尻尾を巻いたような退却劇は、戦力整備のための偽装であったか。


 ヴァナヘイム国・騎翔隊による帝国輸送隊への襲撃が望めなくなった――過日、軍務次官からもたらされた絶望的な事実を、ミーミルは改めて突き付けられたような気がする。


【13-6】浮薄 下

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 イエロヴェリル平原は南北に広い。北端にはトリルハイムの城を中心にケルムト渓谷が広がる。ちなみに、わずか4カ月前まで、ヴァナヘイム軍はその谷底にこもっていた。


 そこから360キロ下った平原の最南端都市・ドリス――ここで、ミーミルは陣容を立て直すつもりであった。


 副司令官・スカルド=ローズル中将麾下各隊にも、ヨータの城を放棄するよう伝騎を走らせた。彼らともドリス城塞にて合流する予定である。




 ところが、撤退を急ぐヴァナヘイム中軍へ、ストレンド城塞のリーグ=ヘイダル少将より、急報がもたらされる。



「我、帝国軍に包囲されつつあり」と。




 ――ミュルクヴィズ城塞を襲った帝国軍別動隊が、ストレンドに向かったのだろうか。


 直ちにミーミルは、脳裏に正確な地図を浮かべる。


【地図】ヴァナヘイム国

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644



 ヴァナヘイム軍本体はエドラを、同別動隊はヨータをそれぞれ放棄し、ドリスへの集結を急いでいた。


 そのエドラには、グンボリ方面から堂々と押し出した帝国軍本体が、間もなく差し掛かるものと報告も入っている。ヨータも遠からず帝国の手に落ちることだろう。


 一方で、救難信号を発してきたストレンド城塞の立地を改めて確認する。この街は、北はヴァーラス、東はドリスを鉄道網で結んでいる。


 すなわち、ストレンドを奪取されることは、鉄路を遮断されることを意味した。



「ストレンドに橋頭保きょうとうほを築かれては、我らはイエロヴェリル平原南端に孤立する」


 にわかに、ヴァナヘイム軍総司令部は忙しくなった。


 ミーミルは、ドリスへの後退を続けながら、ストレンド救出の作戦を練らねばならない。





【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


帝国軍の反転攻勢に、ミーミルは対処しきれるか心配な方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします

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ミーミルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「臆病者 中」お楽しみに。


ミーミルは腕をほどくと、次のように付け加える。

「皆、くれぐれも深追いをせぬように。各将は功にはやることのないように」


んで含めるかのような総司令官の物言いに、アルヴァ=オーズ中将をはじめ将軍たちは一斉に鼻で笑った。


――この若い総司令官はいつもこうだ……作戦開始前に必ず慎重論を口にする。

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