【13-11】正規兵と特務兵 上
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644
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「そ、それが……」
斥候兵は、差し出された水を口に含みながら、弱々しく言葉を続けた。
アルベルト=ミーミルの命により、しぶしぶ派遣された斥候兵が、エドラ城塞のヴァナヘイム軍総司令部に戻って来たのは、11月6日昼前のことであった。
【13-5】浮薄 上
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817139555628979609
よほど急いで駆け戻って来たのだろう。馬はその場にうずくまり、斥候兵も大きく息を乱していた。
だが、参謀長・シャツィ=フルングニル等は、そうした自分たちの見立てが大いに誤っていたことを、すぐに知らしめられた。
この斥候兵の言語中枢を乱していたのは、急ぎ駆け戻って来たという体力的な理由などではなく、衝撃的な現地の様子を目の当たりにしてきたという精神的な理由だったのだ。
「……ミュルクヴィズの街は
「なんだと!?」
「アッペルマン隊はどうした」
フルングニルたちは、伝令兵に向けて一歩足を進めた。
「そ、それが、我が軍のものと思しきちぎれた旗が、
「数十か、それとも数百もの被害を出していたか!?」
「生存者は!?」
「正確に報告せよ!」
「い、いえ、到るところに累々と……地面を埋め尽くすように……いえ、崩れた建物や掘り返された土砂に紛れるようにして……」
「……」
「……」
「……」
「……おそらく、アッペルマン将軍麾下の各隊は、全滅したものと思われます」
斥候兵は、吐き出すようにして報告を終えた。
役目を終えた斥候兵からゆっくりと視線を外すと、参謀たちはお互いに顔を見合わせた。
「まさか、また帝国軍は街とともに我が軍を屠ったのか」
「馬鹿な。以前は小さな村だったぞ。ミュルクヴィズの街は比較にならぬほど大きい」
「そうだ。アッペルマン将軍は5,000以上もの兵を率いていた。いかに帝国軍といえども、それだけの部隊を街ごと粉砕することなど、出来るはずがない」
それら参謀長・フルングニルたちのやり取りを聞いていた総司令官・ミーミルは、しばし思考の泉に潜行していたが、顔を上げるや決断する。
「一度、ドリスまで戻り、態勢を立て直す」
このエドラ城塞都市を放棄し、イェロヴェリル平原南端まで退くことを命じたのであった。
ここから北東へ150キロもの後退である。
連戦連勝、前進に次ぐ前進を重ねていたヴァナヘイム軍が、ここにきて突然、消極策を採ったのであった。
トリルハイム城とその周囲のケルムト渓谷から、南北360キロのイエロヴェリル平原を下りきり、さらに西進すること250キロ。
帝国軍をグンボリ城塞まで追い込んだが、周辺には押えねばならない要衝が多かった。
ストレンド城塞にはリーグ=ヘイダル少将を、ヨータ城塞には副司令官・スカルド=ローズル中将が押さえるなど、いつの間にか、ヴァナヘイム軍は分散を余儀なくされていたのである。
いくら、囚人や失業者によって数を
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
帝国軍の反撃が不気味に感じられた方、ミーミルの潔い決断に驚かれた方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします
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ミーミルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「正規兵と特務兵 中」お楽しみに。
ヴァナヘイム軍のなかで、両者の対立がいよいよ深刻化します。
「……街に転がっていたゴロツキどもが、何やらやかましいな」
「犯罪者が兵法を語るとは、ちゃんちゃらおかしいわ」
「あの総司令官殿なら、今度は乞食どもを参謀に据えるとか言い出しかねんぞ」
兵卒たちは大笑した。それらの大きな声は、たちまち特務兵たちの耳もとに届き、彼らは議論を中断する。
「な、なんだと、もういちど言ってみろ」
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