【14-3】ひとすじの赤い風 上
【第14章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054894256758/episodes/16816927859156113930
【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625
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蜂蜜色の髪の合間にのぞく後輩のあどけない寝顔――それを見届けると、彼女はそっと洞穴を抜けた。
表では夜の
目当ての
今回の数々の失態を理由に、彼女は自身の降格処分を申し出た。蒼みがかった黒髪は、闇夜に溶け込もうとしている。
その申し出に、彼は困惑しているようだった――首をかしげるたびに、紅髪が暗夜にかろうじて浮かぶ。
美味しい紅茶が飲めなくなる。
資料や書物をどこに置いたか忘れる。
以前会った相手の名前を思い出せない。
軍議をすっぽかす。
東都の街で官舎に帰れなくなる。
そもそも、朝起きられない。
そういうんじゃなくて――彼は、ああだこうだと
そして、意を決したように言う。
お前が
彼は続ける。口元から白い息が流れていく。
火計を予期しながら、その発動を止められなかった責任は俺にある、と。
だが、こうすれば良かったと悔やんでも、誰が良いの悪いの云々を議論しても、戦死した者は
彼は再び夜空に視線を向けた。そして、ぼそりと漏らす。
引き続き、俺を支えてくれ。
はい――彼女も頭上を見上げた。枝葉の切れ間に
***
ドリス城下の白煙消え去らぬ12月2日、帝国軍第5旅団麾下の小隊が、城塞北西に広がる森で、友軍と思しき生存者たちを発見・保護した。
隊員たちは、ヴァナヘイム軍の残党狩りのため樹林に分け入ったのだが、そこで味方の将兵と遭遇したのである。
「よく、こんなところで寝られるな……」
小隊長以下を困惑させるほど、紅髪の将校は洞穴の入口で熟睡していた。軍靴を履いたまま両足を組み、両手を頭の後ろに置いて。
すぐ脇には、蒼みがかった黒髪美しい女将校が、パリッとした緊張感をまとって立っている。下手な言動すれば、腰の銃に射抜かれそうな鋭さだ。
驚いたことに、保護された者たちは、先任参謀とその麾下女性将校2名、それに付き従うだけの所属不明の兵卒たちであった。
指揮命令系統の確立はおろか、武器すらまともに持ち合わせていないのである。どこからか分からないが、城内から脱出した先でヴァナヘイム軍を遠望し、彼等はこの森のなかに退避したという。
ほどなくして、そのヴァ軍と帝国軍第4・第5旅団の戦闘が始まった。やむなく、それが落ち着くまで、洞穴やせり出した岩場の下で雨風をしのいでいたそうだ。
【14-2】埃を払う
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彼等はやや衰弱していたものの、いたって元気そうだった。
蜂蜜色の髪の女性少尉が額にガーゼを当てていたものの、これは戦闘や避難の際に負った傷ではないという。
【13-48】消し炭 《第13章終》
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330652693637302
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
レイスたちが無事に保護されて安心された方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「ひとすじの赤い風 下」お楽しみに。
そんな彼らに、ひとすじの赤い風が、吹き抜けた。
同時に先任参謀の腰に、1人の少女が抱きついていた。風はこの
無精髭越しに自らの胸元を見下ろすと、それは参謀見習い・ソル=ムンディルであった。従卒姿の肩を震わせてはいたが、腕には力が込められており、決して離すまいとの意思が感じられた。
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