【13-4】東都の朝 下
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644
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「あの……」
副官・キイルタ=トラフの手に引かれ、少年従卒の制服制帽を身にまとったソル=ムンディルが、戸口に立っていた。
グンボリ城塞内、参謀部の部屋は静まり返っている。作戦発動前の準備に追われ、ゴウラ、カムハル、レクレナ等、他の参謀たちは不在であった。
「なんだ、まだいたのか」
セラ=レイスは、体を起こさずに応じた。この日も軍靴を履いたまま、長椅子に横になっている。
だが、レイスは眠っておらず、かといって何をしているでもなかった。
トラフは知っていた。彼の視界では、この天井にヴァナヘイム国の地図が広がっていることを。天井全体がチェス盤になっていると言った方が正しいだろうか。
届いたばかりの新式砲や角材を含め、帝国軍各隊をどう動かしていくべきか、駒組みを練り、
「あの、まだ、ここに……」
くすんだ赤髪を揺らし、ソルは小声で何かを尋ねようとしている。
少女の代わりに、トラフが口を開いた。
「やはり、何のお考えもなしに、慰安所に入り
【6-11】弛緩 下
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【12-15】転進
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本来であれば、この少女が東都ダンダアクの後宮に納められるはずだった。80門の大砲と1万本の木材の御代として。
【11-18】無心 下〈第11章〉
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427962211025
「引退を迫られていた
レイスは、天井に視線を向けたまま、口元だけを動かした。
「……いきなり、帝国宰相嫡男の
副官の美しい顔に、感心しきれない色が浮かぶ。
東都ダンダアクでは、上級大将の後宮への入室に、ろくな検査も施されないことを、紅毛の上官は調べ上げていた。くだんの女郎も渡りに船とばかりに、話に飛びついてきたそうだ。
「あのラードは、料理の味など堪能しないだろうからな」
しばらくは
「あの……まだ、ここに……」
ソルは、お腹に力を込めて、小さな軍靴を半歩進める。
「私は
トラフは優しく表情をくずし、上官の発言を待つ。
レイスの顔が、天井から少女のもとへ向けられた。
「早くゴウラ少尉やカムハル少尉たちを手伝ってこい」
その声には、もちろんだ、と言わんばかりの響きを帯びていた。
少女の瞳――アンバーが混じった薄い水色――に、ぱっと光が差した。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
大砲と材木の身代わりにソルが東都に送られていなくて良かった、と思われた方、
ソルの居場所が見つかってホッとされた方、
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レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「浮薄 上」お楽しみに。
東都ダンダアク→東征軍参謀部を映したカメラは、ヴァナヘイム軍総司令部に移ります。
「アッペルマン将軍からの連絡は」
「それが、昨夜から通信が途絶しておりまして……」
「……」
ミーミルは、ため息とも
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