【13-3】東都の朝 中
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644
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前夜の
帝国の作法では、身分の高い者が床入りする場合、
暗闇で相手の容姿も見えない以上、どんな女性を寝台においても、この意地汚い脂身はそれを丸呑みするだけだろう。
それが口直しを要求するとは片腹痛い。
はばかることなく
もちろん、
これら生物としての欲求そのものに関して指導の声を強めると、この主人はいつもヒステリーを起こし、最後には己が持つ最大の権力――生殺与奪権――をちらつかせるほどに
そのため、
同罪状による射殺は、一度や二度のことでは済まなかった。
歩く脂身が持つ嫉妬心や猜疑心は常人を超えており、そこに性欲が絡むと異常の域に達する。処刑された遺体は見せしめのため、むごたらしく東都の正門に吊るされた。
あらぬ疑いをかけられてはかなわない――補佐官はもちろん医者まで、後宮から距離を置くようになって久しい。世話係の女官たちも何も物を申さなくなった。
ブリクリウも、いつしかこの脂身の下卑た性質を改めることについて諦めてしまった。
昨今では、父宰相・ネムグラン=オーラム元帥が、この嫡男の好色ぶりに難色を示しているとも聞かれる。
触らぬ神に
こうして、東都最大の権力者の寝所は、神聖不可侵の聖域になり、彼が連れ込むと決め込んだ女性は、メディカルチェックすら受けずに、後宮入りするようになった。
***
「あの……」
副官・キイルタ=トラフの手に引かれ、少年従卒――もとい、ヴァーラス城の令嬢・ソル=ムンディルが戸口に立っていた。伏し目がちな水色の瞳に、長い
グンボリ城塞の一角、参謀部の部屋は静まり返っている。作戦発動前の下準備のため、ゴウラ、カムハル、レクレナ等、他の参謀たちは不在であった。
「なんだ、まだいたのか」
セラ=レイスは、体を起こさずに応じた。軍靴を履いたまま、長椅子に横になっている。
相変わらず、彼の長身からして、ソファのサイズは小ぶりであった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
あれ?ソルは東都に送られていたのでは……と思い出された方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「東都の朝 下」お楽しみに。
「あの……まだ、ここに……」
ソルは、お腹に力を込めて、小さな軍靴を半歩進める。
「私はここに……参謀部に居てもいいの……?」
トラフは優しく表情をくずし、上官の発言を待つ。
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