【13-2】東都の朝 上
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644
【世界地図】航跡の舞台※第12章 修正
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330648632991690
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「昨夜は、お楽しみあそばされましたか」
「……」
帝国宰相嫡男の私邸に出仕したターン=ブリクリウは、恒例の朝の挨拶を申し上げた。
今朝も彼は整髪油で頭髪をすべて後ろに
しかし、主人のアルイル=オーラムは、まだ寝間着のままであり、肉団子のような腹は、いくぶんか
ブリクリウは、狐のような両目をさらに細めた。
大食と悪食で鳴る主人の胃腸は頑健であり、腹を下したというわけではないだろう。
原因は、
「……ヴァーラスの娘の歳はいくつだったか」
やはり、東征軍から送られてきたあの娘をまた床に入れたのか。
「確か、13と聞いております」
答えながら、ブリクリウは呆れていた。
あの娘に夜伽をさせたのは、もう何度目だろうか。その度に、この脂身は
帝国では、男女とも有力貴族は、女妾・男妾の多くを囲っている。宵の口、そうした身分の者は、
ヴァーラス城の娘の情報は、この贅肉にとって最上のものであり、札に記された文字から己の理想を想起してしまうようだ。
だが、
朝食として給仕されたおびただしい数のパンは、つややかな色を放っている。脇に盛られた大量のソーセージやベーコンは、部屋中を
しかし、御曹司の目や鼻は、それらを知覚していないようだ。
「13にしては、肌の張りが悪い」
「さようでございましたか」
「それに、やはりあれは、生娘じゃない……」
「さようでございましたか」
同じ
半年前、東征軍の紅毛の小僧が、ご機嫌伺いのために1人の娘を送り込んできた。戦地から遠路はるばるこの東都まで。
その美しさがヴァーラス
彼には少女を愛でる趣味はなかったからだが、理由はそれだけではなかった。
閨室において、この脂の塊は野獣のように娘にのしかかり、一方的に愛撫し、夜明けまでしつこく交わり続けるのだ。
そのような夜伽が連日続くのである。多くの場合、脂肪漢が飽きる前に娘たちは身体を壊し、出仕できなくなる。そうした元側室たちが「後宮」に数え切れないほど、いまも暮らしていた。
それらは、ブリクリウの貞操観念はもちろん、美意識においてまったく受け入れられないものであり、嫌悪感しかわき起こらないのである。
自然、この男の本性が顔をのぞかせ、今朝の主人への相槌も、終いの方には
「ああ、後味が悪い。今日の執務はお前に全部任せるから、すぐに別の女を寝室に用意させろ」
アルイルは乱暴に言い捨てると、磨き上げられたナイフとフォークなど無視し、片手にパン、もう片手にソーセージを掴み、交互にかぶりつきはじめた。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
朝から主人のこのような話に付き合わされる狐面の大将も大変だな、と思われた方は、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします
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ブリクリウたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「東都の朝 下」お楽しみに。
もちろん、
これら生物としての欲求そのものに関して指導の声を強めると、この主人はいつもヒステリーを起こし、最後には己が持つ最大の権力――生殺与奪権――をちらつかせるほどに
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