【12-0】変調

【第12章 登場人物】

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【世界地図】航跡の舞台※第12章 修正

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イーストコノート大陸北東部は、土地の言葉ヘールタラが示すとおり、どこまでも蒼き草原が続いている。


その地は、騎馬民族国家・ブレギア。


ただし、国主・フォラ=カーヴァル、宰相・キアン=ラヴァーダ以下、この国を統べる者は、帝国からの亡命者である。


彼等は他の地における帝国入植者のように、搾取さくしゅするばかりではなかった。畜産しかなかったこの土地にて殖産興業に努め、国家としてのいしずえを築いた。


剽悍ひょうかんな土着の民を編成したブレギア騎兵「騎翔隊きしょうたい」は、大陸最強の名をほしいままにしている。



そんなブレギアが、西隣のヴァナヘイム国との同盟を締結したのは、帝国暦383年6月までさかのぼる。


宰相・ラヴァーダを、ヴァナヘイム国軍務省次官・ケント=クヴァシルが説き伏せたのである。


ヴァナヘイム国が滅び去れば、次に帝国の刃にさらされるのはブレギアである――。


ヴァ軍総司令官・アルベルト=ミーミルのシナリオは、ブレギア建国前から抗争を繰り返してきた両国のわだかまりを、一時的に忘れさせた。


【7-14】貴婦人 下 《第7章 終》

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紅顔こうがん麗しい宰相は、役者であった。


彼は、国内外での風聞に配慮し、大軍を隣国に派遣しなかったのである。


有史以来、戦い続けて来た隣国に手を差し伸べるなど、ブレギア国内の感情が許さなかった。仇敵きゅうてきのために莫大な戦費負担を領主・領民に強いる無理を避けたのである。


また、隣国の国家としての命脈は、風前の灯火ともしびとなっている。表立って援軍を送り込んだところで、帝国軍の打ち払いに成功する可能性は極めて低い。救援に失敗した挙句、隣国を併呑し終えた帝国ににらまれるような事態は回避しなければならない。



かといって、傍観を決め込むわけではなかった。


同盟締結後、この草原の国からは複数の小規模な騎翔隊が方々へ派兵された。それらは、帝国軍の補給路を次々と寸断。砲弾・銃弾払底や食糧・医薬品欠乏は、帝国軍を苦しめていく。


【7-6】蹄の印 下

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【11-3】閉塞の朝 下

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こうして、7月下旬以降、帝国軍はヴァナヘイム軍によって、敗北と後退を重ねている。


それは、セラ=レイスという頭脳を欠いた帝国軍では、ミーミルの采配が生み出す芸術的な兵馬の進退と、ラヴァーダが遣わした騎翔隊の神出鬼没な襲撃を前に、なす術がなかったというところが実情であろう。



ミーミル・ラヴァーダの両歯車は、バランスよくみ合い、帝国軍を追い込んでいた。


あと一歩でヴァナヘイム国は、息を吹き返すところまで来ていた。


ところが、ここに来て、歯車の1つが運動に支障をきたす――ブレギア国主の容体が、いよいよ芳しくない。病にむしばまれた体は、草原の短い夏を乗り越えるのが精いっぱいだったようだ。


【7-7】親書 上

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トップが重篤じゅうとくに陥ったという事情は、草原の国の権力体制の揺らぎへとつながる。それは、帝国・ヴァナヘイム国戦への影響も不可避なものとなっていく。





【作者からのお願い】

不穏な空気での12章の幕開けとなりました。


ブレギアの揺らぎが、帝ヴァ戦争がどのように影響していくのか気になる方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします

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レイス、ミーミル、ラヴァーダたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「草原の御曹司 1」お楽しみに。


蒼き草原がどこまでも広がるこの地に腰を落ち着けるや、周辺諸国はおろか帝国の討伐軍をも次々と打ち払い、独立国のいしずえを築いた「小覇王」――。


それら偉業の代償に求められた生命エネルギーは、途方もない量であり、この英雄を急速に病み衰えさせた。

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