【11-3】閉塞の朝 下
【第11章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817139554817222605
【地図】ヴァナヘイム国
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644
【世界地図】航跡の舞台※第9章 修正
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817139556452952442
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今朝の軍議も老将の性格よろしく、生真面目に進行していった。
セラ=レイスは腕を組んだまま両眼を閉じた。単調な議事進行が、再び睡魔を誘発したからである。
居眠りをしても軍議の内容など、机上にある書面に5分も目を通せば、彼には充分であった。
眠りの幸せな戸口に立ったレイスは、その
「自己防衛機能」と言うべきだろうか、背後に視線を泳がせてしまう。
――落ち着け、キイルタのヤツはいない。
口うるさい副官はこの集会所の外で待機している。耳に強烈な痛覚を認識することはなかった。
【5-20】お化け屋敷 中
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【6-11】弛緩 下
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議題は、損害を出し続けている補給隊の報告に入った。
草原の国の騎兵による妨害であることは、ようやく帝国軍首脳部の共通の認識となっている。
建国以前から戦い続けてきたヴァナヘイム・ブレギア両国が、手を結ぶことなどありえん――2カ月前、レイスたちが初めてその事実に気が付いた際は、一笑に付されたものだったが。
【7-6】蹄の印 下
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それにしても、相も変わらず、長躯して物資を
輸送隊の壊滅には、小麦粉やバター、砂糖に塩、それに脱脂粉乳が運命を共にした。
帝国将兵20万人へ安定的に食糧を供給するには、各隊へとめどなくそれら輸送物資が行きわたらねばならない。
――パンの配給がまた滞るのは、しんどいな。
帝国各隊では、今週に入ってようやく、主食が欠かさず提供されるようになった。
もっとも、配給されるブラウンブレッドは、ひと回り以上小ぶりであり、以前の状態に戻ったとは言い難い。
それでも、穀物を3食とも口にできるようになったことで、帝国将兵は沸いた。朝もしくは昼に、それらの欠品する日が長らく続いていたからだ。
今朝の軍議の席に、珈琲・角砂糖・粉末ミルクが並べられているのは、さすが総司令部といったところだろうか。
レイスが食糧の心配をしているうちに、議題は、帝国東征軍が置かれている戦況報告に移った。
従卒たちが、巨大な図面を用意しているのであろう。大判の紙が広げられる音が聞こえたが、彼は相変わらず眼を開けなかった。
この若い将校の頭のなかには、敵味方の位置から、地形の特徴まですべてが叩きこまれていたからである。
だが、いよいよ帝国各隊の状況は、芳しくない。
特に7月20日未明から同24日宵にかけてのヴァナヘイム軍の猛攻を被ってからというもの、ひと月以上経過したいまでも、後手に回りっぱなしである。
四散した帝国軍右翼について、東征軍総司令部による必死の再編成が実を結びはじめたものの、ヴァ軍もそれを見守っていてはくれない。
再編を急ぐ帝国軍の布陣が甘いと見るや、彼らはケルムト渓谷から飛び出し、散々に撃ち破っては、再び自陣に引っ込むことしばしばであった。
このような敵の巧みな動きに、味方は
とりわけ、エレン郊外での敗北は、
8月16日未明、エレン城塞都市に
先日の右翼各隊の惨敗により、帝・ヴァ両軍の攻守・イニシアティブともに入れ替わってしまっている。
帝国軍・中央第1、第2師団は、イエリン城塞に退く際、ヴァ軍のアルヴァ=オーズとフィリップ=ブリリオート、両軍団による猛攻にさらされている。その火の粉がこちらにも降りかかったというところだろう。
エレンに接近しつつあるヴァ軍は、
総司令官に着任したアルベルト=ミーミルという1人の男が、ヴァナヘイム軍のみならず、外交方針にまで劇的な変化をもたらしたことなど、ミーミルとその周囲だけの認識であり、前線の指揮官が把握していないのも、無理はない。
もっとも、ブランチ一族は、地味に肥えた所領を有するなど、帝国東岸領でも群を抜いて恵まれた貴族将校たちであった。同家の「雌牛」の紋章は、豊かさを象徴している。
ヴァ軍将兵の厳しい台所事情――総司令官やその幕僚たちまで、手勢を率いて前線に出てこなければならない状況――など理解できようはずもない。
あの狼の戦旗さえ引っこ抜いてしまえば、ヴァ軍はたちまち瓦解し、この戦役も一挙に終幕を迎えるはずなのだが――そうした事実に彼等が気が付くことなど、夢のまた夢なのだ。
エレンの街は西面・北面こそヴィムル河という天然の堀が流れている(酷暑のため水をたたえなくなって久しいが)。ところが、北東から南にかけては遮るものがないばかりか、街道都市として門を広く構え、往還に接続していた。
帝国中央第3師団は2万。兵力はこちらに分がある――ブランチ少将は、エレンは守りに適さないと判断し、城塞を出て平原で迎え撃つ決断を下した。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
ミーミルVSブランチの結末が気になる方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「夜襲 ①」お楽しみに。
「父上、敵は夜襲を仕掛けてくるのでは……」
アーダン=ブランチ准将は腕を組みながら口火を切った。
「夜襲か……
ウスナ=ブランチ少将は、目元に深い皴を刻むと同時に吐き捨てた。
油断し敗れ去った右翼の友軍各隊のように、我ら中央軍の一角を簡単に抜けると、ヴァナヘイムの奴らは思い込んでいるのだろう――この初老の将官にとって、それが
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