【プレイバック⑪】アシイン=ゴウラの小休止

【第8章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429051123044

【組織図】帝国東征軍(略図)

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927862185728682

【イメージ図】囮作戦

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927862491118468

【地図】ヴァナヘイム国

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644

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 ヴァナヘイム軍は、着実に守備陣を整えていく。

 

 このまま坐していては、帝国軍が面白くない状況に陥るのは目に見えている。


 本来のが帰ってきた。慰安所で骨抜きにされてしまったのではないかと心配していたが、いつもの調子を取り戻したようだ。



 帝国・ヴァナヘイム両軍主力を衝突させるべく、《うちの大将》が作戦概要を描き、レディ・アトロンが膝を打った。


 それにしても、この2人は、チェスの対局で分かり合えちまえるんだから、大したもんだ。


【6-12】対局 上

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427712873068



 俺も、筋トレを通じて分かり合える相手を見つけるとしよう。




 とレディ・アトロンは、動き出した。


 レディ・アトロンは、ブレギア産の黒毛の名馬を献上してまで、としての出撃許可を勝ち取ると、の考え抜いたおとり作戦を展開する。


 大掛かりな局地戦を仕掛け、敵の主力を戦場に引きずり出すことで、両軍による全面戦闘を演出しようと試みたものである。



 レディ・アトロンの独壇場だった。


 彼女は、味方を退かせつつ、ヴァナヘイム軍の猛将を誘い込む――指揮官としての卓越した采配能力をいかんなく発揮した。


 そうかと思えば、危機に陥った味方を救うため、自ら陣頭に立ち敵のただなかに飛び込む――個人としての戦闘能力をこれでもかと見せつけた。



 ヴァ軍の主力・オーズ隊は、この策に乗りかけたが、肝心の味方――帝国軍主力がついてこなかった。


 第1軍司令・エイグン=ビレー中将とその幕僚たちは、兵馬を出し惜しんだ。


 彼らは、戦後の論功行賞しか見据えておらず、こんなところで雌雄を決する一戦など、交えるつもりはさらさらなかった。勝っても損害多く、負けでもしたら論功行賞駆け引きに出遅れるからだ。



 こうして、せっかくの囮作戦も膨らみかけたまま、しぼんでしまったのである。




 帝国各隊に、必要な物資が届かなくなった。


 はじめは食後の安酒、次第に付け合わせの野菜、ついには主食の材料たる小麦まで。


 輜重しちょう隊が、各地で襲われているらしい。


 俺たちを飢えさせることで、戦意を喪失させようとする腹積もりなのだろう。


 ヴァ軍は、巻貝のように渓谷に閉じこもっている。敵は山賊とも手を組み始めたのではないか、と帝国各隊ではささやかれ始めた。



 だが、護衛を増強した輸送隊を殲滅させることなど、山賊ふぜいが出来る芸当じゃないと、は同調しなかった。


 整った装備と高い戦闘能力から考えて、訓練を重ねた正規兵でなければ、できない芸当だろう、と。


 しかも、数百キロの距離を自由に動き回ることができていることから、歩兵でなく総騎兵部隊を遊弋ゆうよくさせていることになるだろう――。


【7-2】欠乏 中

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 そんな折、輸送部隊が襲撃を受けているのと急報に接し、俺たちはフレヤ郊外の現場に急行する。


 上官が指し示す先に、1頭の軍馬が死んでいた。


 驚いたことに、背に負ったくらや、そこに下げられたあぶみの形状、動物の毛を織り込んだ腹帯――すべてが草原の民族特有のものであることを示していた。


 さらに、それら鞍や鐙にはマナナン社を示すひづめの印が確認できた。同社は、ブレギア国の名宰相・キアン=ラヴァーダが立ち上げた国策会社である。


【7-5】蹄の印 中

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 の推測は正しかった。輜重隊を襲撃していたのは、山賊ごとき烏合うごうの衆ではなく、草原の国・ブレギア――東大陸最精鋭の騎翔隊きしょうたいだったのである。


 長年敵対してきたヴァナヘイムとブレギア両国が手を組んだというのか。


 それも、敵の新総司令官のがねだとは言う。



 帝国軍の右翼を任されている上層部は、いよいよ戦後の取り分争いに忙しく、事態の深刻さに気がついた者はいなかった。






【作者からのお願い】

「アシイン=ゴウラの小休止」も、今回を含め、残すところあと2話となりました。


囮作戦……成功していたら、ヴァナヘイム国王都を簡単に落とせていただろうに、と思われた方、

レディ・アトロンは、本当に優れた将校だった、と思い出された方、

ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758


ゴウラたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「【プレイバック⑫】アシイン=ゴウラの小休止」お楽しみに。


脱線に主観続き、すぐにトレーニングを始めてしまう――長らく続いたゴウラの小休止も、次回がラストになります。


帝国は惨敗を喫し、レディ・アトロンがあえない最期を迎えます……。

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