【プレイバック⑫】アシイン=ゴウラの小休止 終
【第8章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429051123044
【組織図】帝国東征軍(略図)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927862185728682
【イメージ図】イエロヴェリル平原の戦い
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817139554877358639
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383年7月、両軍が
この平原の夏は、俺たちが体験したことのないほどの熱暑だった。
特注の鉄棒も
渓谷に
敵さんもきっと暑いのだろう――谷底に守りを固めたまま、ちっとも出てこない。それを真に受けて、帝国軍各隊は平原に散らばっちまった。物陰も飲水もないのだから、仕方がなかろう。
食糧不足がいよいよ深刻さを増しているところに、日陰不足と水不足……三重苦にさらされたら、帝国軍上層部でなくとも、当座の対応を余儀なくされるはずだ。
【8-2】炎暑 下
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927861629793792
そこを、見事に
敵の総司令官は、涼しく水の確保にも容易な谷底に潜み、俺たちがバラバラになるのを待っていたんだ。時間を無駄にせぬよう、自軍には猛訓練を課しながら。
各隊とも連携が取れない帝国軍右翼は、まともな反撃すらままならぬまま、各個撃破されちまった。
それにしても、谷底から這い出してきたヴァナヘイム軍のヤツら、やけに数が多い。俺たちの前に展開するアルヴァ=オーズ師団は、1万5,000と値踏みされていたものが、どう見積もっても3万は下らないのだ。
「やつらは自陣に閉じこもっている間に、兵士が
少しでも緊迫した雰囲気を和ませようと軽口を叩いてみたが、カムハルやレクレナたちに妙に納得されちまった――そんな樹木があってたまるか。
【8-5】兵士が生る樹 上
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427875025133
うちの大将をもってしても、どうしようもなかった。野砲を数門ぶっ放したところで、
この敗戦で、帝国の右翼各隊が受けた被害は、尋常ではなかった。軍司令も師団長も、指揮すべき将兵を見捨て、
俺たちも、後方の帝国本隊に逃げ込むため、退却を急がねばならない。
撤退にあたって、レディ・アトロンと、うちの大将が、はじめて意見を異にする。
彼女は、「後方、帝国中軍に合流するまで、追撃を受けることはない」と、楽観的な計算をした。
彼は、「敵司令官は恐るべき速さで追撃に移り、味方は帝国中軍にたどり着く前に粉砕される」と、悲観的な計算をした。
彼女は、傷ついた味方を1人でも多く救おうとした。
彼は、足手まとになる者は打ち捨てようとした。
両者が理解し合う機会は、永遠に来なかった。
すべては、うちの大将の予測どおりの展開となった。
レディ・アトロンは、最後まで平原に残った。
そして、
帝国軍は、本当に惜しい人材を失っちまった……。
指揮官としての采配能力。
武人としての戦闘能力。
何よりも裏表のない清々しいまでの人柄。
こうした替えが効かない人物が倒れ、我先と逃げたお偉方は生き残った。
馬好きのビレー中将は、先にレディ・アトロンから献上された、ブレギア産の極上馬のおかげで命拾いしたらしい。
何とも皮肉な話である。
***
副長殿から依頼された、振り返りについては以上だ。
俺が知っていることは、全部話させてもらった。
この先、俺たちは、アトロン連隊をはじめとする敗残兵――再編後も一部隊として組み込むには半端な余りもの――とともに、臨時大隊を編成。そのまま、予備隊として後方に置かれるらしい。
いまのうちに荷物をまとめておくように、今朝、副長殿から指示があったのを思い出した。
敗走に次ぐ敗走が続いた俺たちに、まとめるほどの荷物もないのだが。
そうだ、レクレナ、俺の鉄
【プレイバック⑫】アシイン=ゴウラの小休止 終
【作者からのお願い】
「アシイン=ゴウラの小休止」は最終話を迎えました。
途中、副長トラフの軌道修正が入りながらも、ゴウラの想いは強く……予定を上回る話数になってしまいました。
ここまでお付き合いくださり、感謝申し上げます。
ステンカ戦役――サマラ撤退作戦――については、いつか詳細を描きたいと思います。
振り返りはもうバッチリの方、
レディ・アトロンには生き抜いて欲しかった方、
ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
ゴウラたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回からは、第10章「首飾り」が始まります。
その後のフェイズは、ヴァナヘイム国へ――アルベルト=ミーミルのファンの皆様、お待たせしました。
総司令官である彼は、戦勝報告のため王都ノーアトゥーンへ呼び戻されます。
そこで、「首飾り」の巡り合わせにより、1人の少女(?)と出会います――。
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