【7-9】3つの依頼

【第7章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700428974366003

【世界地図】航跡の舞台

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927860607993226

====================



 ケント=クヴァシルがヴァナヘイム国王の親書を奉じつつ草原の首都を訪れ、いままたアリアク城塞へ向かいつつある。


 さかのぼること3週間前、総司令官就任に際してミーミルは、この軍務省次官に3つの依頼を提示していた。


【4-9】消し方 下

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927860435583984



 1つ目は、再度諸将を招いての就任式の挙行であった。


 ミーミルは、青二才の己がトップに就くことで、ヴァナヘイム軍は不平分子の巣窟そうくつとなることを見越していた。


 のヤンネ=ドーマルの時ように、各隊の将軍たちが、総司令官の命令に従わないようでは、どのような作戦を立てても無駄である。


【2-7】庭師将軍 上

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427279122218



 そこで、総司令官就任に際して、儀礼を踏まえた式典を文武百官に披露することで、ミーミルは己の持つ最高指揮権に、公的色合いを強めようとしたのである。


 アルヴァ=オーズ中将以下、一部の将軍たちによる反発は根強く残るものの、正当な手続きだけでなく、正統な儀式を経たことで、新総司令官は孤立を免れることができたのであった。


【4-11】任命式 再び

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927860229135818




 アルベルト=ミーミルからの依頼、その2つ目が、ブレギアとの同盟締結であった。


 敵を以て敵を制する――帝国という眼前の強敵に、ブレギアという年来の仇敵きゅうてきを充てるのだ。


 新総司令官の柔軟な発想に触れた軍務次官は、しばらく呼吸を忘れるほどの衝撃を覚えたのであった。



 長年戦い続けてきた隣国に対し、帝国軍との決戦場に援軍を派遣してもらおうというのは、どだい虫の良すぎる話である。


 そのような直接的な提携など、かの国の為政者たちに一蹴されるだけだろう。


 そこで、ミーミルは、隣国の軍事力を間接的に拝借したいのだと言う。


 かの国の誇る騎翔隊を長躯させ、橋を落とし、崖を崩して道を塞ぎ、輸送隊を襲撃する。


 帝国軍の補給線をいたるところで寸断し、その勢いを弱体化せしめようというのである。



 自国を飲み込もうとする天敵の土手っ腹に、有史以来争いを繰り広げてきた宿敵をぶつけてしまう――その発想の斬新さもさることながら、騎兵の運用にも革新的なものがあった。


 五大陸を見渡しても、騎兵は各国の主力であり、陸軍の宝であり、戦場の大団円を飾る華であった。


 とりわけ、ブレギアの誇る騎翔隊は、大陸最強の呼び声高い。それほどの存在を、後方攪乱かくらんという地味な任務に使おうというのである。


 ――例え間接的に力を借りるとしても。


 ブレギアの助力が得られれば、ヴァナヘイムは持ち直すかもしれない。


 ミーミルの説明を聞き終えたクヴァシルは、大いにうなずいた。





【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


帝国という眼前の強敵に、ブレギアという年来の仇敵を充てる――ミーミルの策に舌を巻かれた方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758


クヴァシルたちが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢




【予 告】

次回、「東へ西へ 上」お楽しみに。

ミーミルからの3つの依頼のうち、2つ目の約束を果たすべく、クヴァシルは草原の国を東奔西走します。


むしろ、ブレギア側としても、帝国に蹂躙じゅうりんされる前に、少しでも多くヴァナヘイム領をかすめ取ってやろうと考える方が順当であろう。


すなわち、ヴァ国から中途半端な外交員など送り込んだら、交渉決裂どころか、騎翔隊による侵攻も招きかねないのだ。


こうした事情から、軍務省次官・ケント=クヴァシル本人を使者として起用することは、ヴァ軍の新任司令官であり、ブレギア参戦の発案者たるアルベルト=ミーミルたっての希望なのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る