第3話 夢と現実2
今年の4月から私は、地元の組織設計事務所に就職します。そこは、インターンシップのときからのお付き合いで、採用が決まった時の嬉しさは、今でも忘れることができません。勿論、私は、新入社員として入社することになるので、覚えることが膨大にあり、先輩の後ろ姿を見ながら学ぶことになります。何よりも、まずは、1級建築士の資格を取らないといけないので、頑張っていきたいです。
ところで、皆様は、設計事務所と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?例えば、世界に名が知られている安藤忠雄さんや隈研吾さんなどが代表を務めてらっしゃる事務所のことを思い浮かべる人が多いのではないかと思います。それらを、総称して「アトリエ設計事務所」と呼ばれることが多いです。それに対して、意匠、構造、設備設計者が集まり、設計専業の会社組織の事務所のことを「組織設計事務所」と言います。
この2つの大きな違いは、個人が主宰しているか、会社として経営しているかという所にあります。
個人が主宰している事務所は、一般的に、その人の個性が、建築物に表れます。例えば、先述の安藤忠雄さんなら、RC造(鉄筋コンクリート造)の自由な設計や西沢立衛さんなら、単純な箱などの形にとらわれない設計が特徴的ですね。これは、建築を1つの「作品」と捉えて設計していることが大きな要因だと考えられます。つまり、「アトリエ設計事務所」は、利益を追求することよりも、建築を「作品」と捉え、建築家個人の作品性や芸術性を追求することを優先する傾向が強いです。
それに対して、「組織設計事務所」は、会社ということもあり、利益を追求する傾向が強いため、どうしても自由な設計はしにくいです。その反面、その地方での実績が多い事務所や、歴史が長い設計事務所も存在します。大手企業ならば、世界で活躍する会社も数多く存在しています。例えば、日建設計さんや三菱地所さんなどが挙げられます。つまり、「組織設計事務所」は、堅実なデザインが得意で、多くの建築物を手掛けることから、実績が蓄積しやすい事務所と言えます。そして、会社経営なので、利益を追求する傾向が強いです。
聞いていると、アトリエの方がかっこいいかもしれません。実際に私もそうだと思います。
しかし、現実は、甘くありません。まず、設計事務所は、残業が多いです。そして、特に、アトリエは、給料がものすごく低いです。組織設計事務所も低いですが、社会保障等は万全なので安心できます。しかしアトリエは手取りが、月に10万程度ということがざらです。
「え、生活費は、どうするの?」
という声が聞こえてきそうですが、事務所で毎日を過ごさないといけないくらいブラックです。しかし、先生のもとで修行し、多くの経験ができるため、独立して活躍したいという人は、こちらの方がお勧めかもしれません。ただし、念頭に置いていただきたいのは、「そこを2~3年でやめる人が多い」ということです。残業は、察してください(諦)。
また、組織設計事務所は、その地方での実績があることが多く、その地域の建築系の人に会社名を言うと有名な場合があります。私が就職する設計事務所もその地域では有名で、中堅であるためか、信頼されている面があります。
このように、2つの設計事務所の特徴には、一長一短ありますが、設計(特に意匠設計)に行きたい方は、このことを頭において就活をしてください。
ちなみにですが、建築デザインに興味がある場合は学生の間に、アトリエ、組織関わらず設計事務所のアルバイトがあれば、是非ともやってください。私も1度やりましたが、良い経験となりました。本当に、「百聞は一見に如かず」なのだなと感じました。
今回は、以上となります。今後とも宜しくお願いします。
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