第2話 夢と現実1
「ぼくのしょうらいのゆめは、家をせっけいすることです!」
私が、建築に携わる仕事をしたいと考えだした頃は、小学2年生ごろです。理由は、いたってシンプルです。それは、「建築に携わる父に憧れたから」です。
より正確に言えば、建材店に勤めていた父の後ろ姿が格好いいなと感じたからでした。本当に、シンプルですね。(笑)
でも、そこからここまで来たので、意志が強いのか頑固なのか分かりませんが、とにかく今までよく頑張ってきたと思います。建材店とは、名前の通り、建築に使う建材を取り扱う店です。父は、そこで働いており、図面を家に持って帰って仕事をすることもありました。また、小学1年生のときに、家を新築しました。家を設計してくださった建築士やそこで働く大工さんも格好いいなと感じて、建築に携わるという夢を持つことができました。しかし、大学に入学し、建築に対するイメージが変わります。そして、格好いいでは、済まされないこともあると感じました。
皆様は、「3K」というものを知っていますか?
それは、作業環境及び労働環境が、「きつい」、「危険」、「きたない」のローマ字の頭文字をとったものです。さらに、最近では、「帰れない」「厳しい」「給料が安い」を加えた「6K」と言われるものがあります。これに当てはまる職種は、主に建築、土木、看護師などです。最近の働き方改革で、建設現場も少しずつ改善されてきているそうですが、ほかの業種に比べるとまだまだであるとT社の方が言われていました。
無理もないと思います。とある講演にて、講師の教授が言っていたことが今でも正しいと感じています。それは、「建築業の働き方改革は、他の業種の働き方改革より難しい。」というものです。なぜそのようになるのか。理由は、簡単です。建築現場には、工期が存在することと、人材が不足しているからです。
まず、現状では、建築現場で、完全週休二日制はほぼ不可能です。何度か講演に来て下さった先輩から完全週休二日制の話がなかったので間違いないでしょう。さらに、現場見学やインターンシップにも参加しましたが、そんな甘い話はありませんでした。そして、現在も建築に携わる父からも聞かないので、どうしようもありません。こう聞くと、かなりブラックな感じがしますが、工期で、四六時中忙しいわけではありません。作業工程の中で、比較的落ち着いて行える作業と、かなり忙しい作業が交互に来ます。まるで、波のように。そして、作業が、少しでも遅れると後に響いていき、工期で決められた竣工日を絶対に間に合わさなければならないことから、普段の残業に加え、遅れた分だけ残業することになります。そして、人手不足により、1人が持つ仕事が自然と多くなることが、拍車をかけるわけです。人材不足については、リーマンショックから続く職人の離職、アベノミクスによる建設ラッシュや公共施設の老朽化等による建て替えの時期の到来などにより、普段でさえいないのに、より不足してしまいました。
現状の建築業の働き方改革と言えば、作業の効率化などが良く上げられます。例えば、省力化工法を取り入れたり、ITを駆使したりすることですね。
しかし私は、まず始めに、発注者の理解、社会全体の理解が浸透することこそが一番ではないかと考えています。仮に、建築現場で、完全週休二日制をとるのであれば、工期は、かなり長くなります。それを許容できるのか。そして、人材の獲得のために建築のすばらしさを知ってもらい、人材不足を獲得していく。このことができるのかに大きな課題があります。
長々と書いてしまいましたが、少しでも、建築業界の状況の一端を知って頂けたと思います。勿論、地方に目を向ければ、待遇改善ができていない現場なんて山ほどあるので、ここでは、建築現場の一般論として述べさせていただきました。やはり、夢と現実というのは乖離が激しいですね。
次は、設計事務所などの現状について書くことができればいいなと考えています。
宜しくお願いします。
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