「変わった」ということが変わらないということ

誰もが抱いたことがあるであろう「それ」が瓦解していく瞬間を見せつけられました。
ですが、それはある意味まさしく現実の情景であり、われわれが直面するであろう未来図でもあるでしょう。
私はあまりこうしたジャンルの短編は読まないのですが、この「曲が無いロックバンド」には、〈近似性〉を感じました。現在地点の「私」とさほど隔たっていないような、うまく言えないけど、幼馴染と語っているような。

この1篇は、虚無主義的な読後感をもたらすと同時に、どこかで予想され得た事実をわれわれに投げかけます。きっとそれが、否応なく訪れる2020年の姿なのです。