何かを失うことが不幸なだけではないという現実にもありえること。だけれどそれを言葉で表現することができないというパラドクス。ナンセンスな話であると一言で片付けるには現実世界に近似していることが多いと考えさせられます。平易な表現かつこの文字数で、脱帽の一言に尽きます。
ひっそりと現れた「現象」が、人々を蝕んでいく物語──と思いきや、最後まで読んだ時にそれとはかなり違う印象を受けました。じつは蝕まれているのは読者かもしれない、とさえ感じさせるうまい言説です。短い文字数ながらも、荒涼感を醸し出すような筆致に舌を巻きました。
私はこの世界は寒々しい世界とは思わない。確かに、言葉を、思いを伝える手段を失った。だが、それは私達の目線から見るからではないか?この世界は、言葉を失う事で違う手段で意思を伝えるに至った。それが出来るのなら、今我々が居る世界とそう変わりは無い。と、いう短いながらも考えさせられる作品です。興味を持ったのなら直ぐ、読むべき。
なんとも寒々しい、冷えきった世界だ。題材に対してここまで負の方向からのアプローチを試みた作品は他にない。 しかし、思考実験としては非常に面白い。これはもう、言葉の絶対零度だろう。 一度獲得したコミュニケーションを失うのがどれほど苦痛か、本作は逆説的に示している。
世界からどんどん言葉が消えていくお話です。長い間言葉で表現し、文明を築き上げてきた人々。もしも彼らから言葉が消えたら、どうなるのか……どこかリアルで、考えさせられるお話でした。