「ありふれた文体」を引き裂く幻想譚

紹介文通り、パラグラフのない一篇でした。ですがそれが既に、この物語に妙味なエッセンスを添えています。
くっきりとした輪郭はこの物語には存在しないように見えました。穿った言い方をすれば――どこからともなく現れて、静かにわれわれの世界に落ちてきた。そしてまた消えて天昇する。そんなテクストでしょうか。
わたし自身ファンタジーはほとんど読まないのですが、これはその枠を超えてひとつの幻想世界を構築している、非常にいい一篇でした。お見事!