南陸奥の守護神、エミシオン!

神孫子宮子の受難

side神孫子宮城

私、神孫子あびこ宮子みやこ、16歳。

皆んなからは「ミヤ」って呼ばれている。

私は3.11の時に家族親戚を地震と津波で皆んな亡くした。

当時7歳だった私は引き取り手が無く、関東の児童養護施設に入れられるところ、福島県飯館村から避難してきた、子供を授からなかった今のお義父さんお義母さんと養子縁組をして、「神孫子宮子」として私は生まれ変わった!


宮城県運転免許センター

モニターに合格者の番号が表示される!

-ドキドキ

-パッ

「○○番…」

ミヤは何回も番号札とモニターを見返した。

「やったぁー!普通二輪免許に合格したぁーっ!!」

ミヤの歓喜の声が運転免許センター内に響き渡る。

「あっ…」


多賀城市内、神孫子邸

「ただいまー!!」

「おけぇり!普通二輪免許取ったんだってな?」

「んだ!早速免許証作ってきたじゃ!なんじょどうだで!?」

「ミヤの初めての免許証証、まぼいカッコいいなや〜」

ミヤの義理の両親、神孫子あびこ北斗ほくと美星みほしはミヤの普通二輪運転免許証をマジマジと見る。

「んで、あの約束おべでるよな?免許取れたら…」

「ああバイクを買う約束だべ?おべでるっでば!」

「このためにオライ私の分の3.11の国からの補助金や慰謝料を使わねで取っといで、おどっつぁんお父さんおがさんお母さんの原発事故の国と東電からのじぬを少し分けて貰ってようやっと一括で買えるのっしゃ!」

「んだば、明日早速買いさあべ行こう

「やったぁー!!これで夢の東北一周バイク旅に出れるぅ〜!」

「ミヤがいくつになっても喜ぶ顔を見る事がオラだの生き甲斐だ」

ミヤギは喜びを噛み締める様子を、両親は微笑ましく見ていた。


翌日、仙台のバイクセンターに来ていた神孫子一家は、ミヤギがあるスクーターに目をつけた。

「ねぇねぇ、見て見てけろこれ!前の車輪が2つに分かれててまぼいカッコいい!!」

「ああそちらは「トリシティ」って今話題のスクーターですね。“リーニングリバーストライク”略して“トライク”と言う車種です」

「へぇーこれなら通学にも旅行にも行く先々で皆んなさ自慢できるな!」

「失礼ですが、お客様の免許の種類は?」

「普通二輪免許でがす!!」

ミヤは店員に免許証を堂々と見せつける。

「お客様の免許で運転できるトライクとなりますと…」


後日

神孫子邸

ブルーのトリシティは納車された。

「うわぁ本当に前が2輪のバイクだぁ!」

「改めて見るとまぼいじゃや!」

「この間にヘルメットも買ったし、早速あの場所まで運転してみていがす?」

「もしかして?」

「多賀城跡!」

「ミヤは昔っから何かあると多賀城跡さ行くほど気に入ってる場所だなや。いがすいいよ、行ってござい!」

「怪我無い様にな!」

「はーい!んだば、行ってきまーす!」

-ブロロ

-ブォオオ

両親に見送られ、ミヤはトリニティを起動させて多賀城まで走らせた。


多賀城跡

陸奥国の国府があったこの土地は、仙台平野を一望できる松島丘陵の先端に位置する。

特別史跡にもなっている多賀城跡へミヤは近くの駐車場にトリニティを停め、中心部である政庁跡に立ち上っては真ん中に座り込んだ。

ミヤは3.11以来、何かにつけてはこの多賀城政庁跡に来ては物思いにふけるようようになった。

(あの震災以来、多賀城が、いや、東北の中心部が私を呼んでいる様な気がする…)

ミヤは多賀城跡に呼ばれている。

「そんな馬鹿な」と笑い飛ばしたくとも否定できない強い引力がミヤを多賀城跡に呼び寄せているのだった。

(東日本大震災から9年経つけど、当時のあの天変地異を肌で感じたはずの私の同年代の人達は、今何事も無かったかの様に人として当たり前の事をあの時失ってしまった当たり前すぎた大切な全てを軽んじ始めている。果たしてこのままでいいんだろうか?)

ミヤは物思いにふけるときには標準語になる。

だが多賀城跡全体に、

-ズシンズシン

「地震!?違う?別の揺れだ!」

ミヤが後ろを振り向くと、ヴェロキラプトルに似た巨大な鉤爪を持った恐竜ロボットが本庁を目指して突進してきた。

「ひえ!?な、なんだれ!?なして恐竜が!?」

ミヤは一目散にトリニティを停めてある駐車場へ走る。

しかし次第に追いついてくる。

ミヤがようやっとトリニティに触れた瞬間、ミヤとトリニティの下に魔法陣の様な円形の異空間の入り口が現れ、ミヤとトリニティはそこへ吸い込まれていった。

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